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こんにちは、一年生の木村です。八月二十五、二十六日に愛媛県松山市で俳句甲子園全国大会が行われました。わが文芸部からは三年生一名、二年生一名、一年生三名の計五人チームで出場してきました。引退した三年生の堀下にかわって、木村が松山での報告をさせていただきます。よろしければご覧ください。

 二十五日は大街道商店街で予選リーグと決勝トーナメント、二十六日は場所を変え松山市総合コミュニティセンターで敗者復活戦、準決勝と決勝戦が行われました。
 
 抽選の結果、私たちは予選リーグでG会場となりました。対戦チームは愛媛県立伯方高校と石川県立金沢泉丘高校。10時10分から第一試合「夏の海」(旭川東vs伯方高校)、10時50分から第二試合「ゼリー」(伯方高校vs金沢泉丘)、11時30分から第三試合「蓮」(泉丘vs旭川東)というはこびとなりました。審査員の先生方は阪西敦子先生、大年くりや先生、幸尾螢水先生、望月とし江先生、熊本良悟先生です。

 さて、第一試合は地元愛媛の伯方高校。全員一年生のメンバーで、前日のウェルカムパーティーのときにも少しお話させていただきました。兼題は「夏の海」。先鋒戦の句は私たちにとって思い入れのある句で、ここで一勝して勢いをつけたい。そんなふうに思っていました。なので、すべての旗が私たちのチームにあがった瞬間を見たのはとても嬉しかったです。中堅戦は勝利し、大将戦は惜しくも敗れてしまい、2対1で旭川東高校の勝利となりました。
 第二試合は伯方高校と金沢泉丘との戦い。兼題は「ゼリー」でした。今日は一年を通して生活の中にあるゼリー。ゼリーを夏の季語として表現するのには苦戦しましたね。しかし、苦戦したぶん自分たちの好きな句を作ることができました。両校がディベートをしているのを見ていて勉強になると思いつつ、ゼリーでディベートしたかったなぁ、というのがメンバーの本音でした。たくさんの人に自分たちの俳句を見てもらいたかったです。話はそれてしまいましたが、第二試合は金沢泉丘高校の勝利となりました。
 第三試合は金沢泉丘高校。行きの飛行機の中でもお会いし、抽選会のときにはこの対戦は運命だったのかもしれない、そんなお話もしました。兼題は「蓮」です。互いに一勝ずつしており、譲れない戦いとなりました。結果は1対2で金沢泉丘の勝利。私たちにとって悔しい結果となりました。自分たちの句の景のあいまいさ、ディベートの弱点などに気づかされ、負けた分とても勉強になりました。
 予選リーグ終了後、審査員の先生方に挨拶に行ったところ、「まだ敗者復活戦があるから」、「素敵な句でしたよ」などのお言葉をいただき、これからの敗者復活戦に向けて気持ちがとても軽くなりました。まだ泣くのには早い。私たちの俳句甲子園はまだ終わっていない、そんな風に思いました。
試合中に大雨が降りましたが、そのおかげで暑さもやわらぎ、体調不良を起こすメンバーもいなくて安心しました。運営の方や俳句甲子園OBOGの方にもたいへん良くしていただき、万全の心持ちで試合にのぞむことができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。メンバーの一人が、商店街を歩いていた方に見ていてとても面白かった、とのお言葉をいただいたそうです。俳句についてなにも知らない通りすがりの方だそうで、一般の人にも俳句の楽しさを少しでも知っていただけたのかなぁと、とても嬉しいです。
 
 日付はかわり、敗者復活戦、準決勝と決勝の日です。昨年のコミュニティセンターでの決勝戦の映像を、松山に行く前にメンバーで見ました。自分たちがその場に立っていることに気づき、ここでもう一度ディベートをしたいとやる気が一段とわいてきました。
 敗者復活戦では三年生と二年生の二人が参戦しました。一年生は客席で他の高校の句と審査員の先生の質疑応答をすべて聞くことができました。前日に発表された兼題は「蓑虫」。旭川東高校の質疑応答の審査員の先生は高野ムツオ先生でした。他の高校の俳句の完成度の高さに驚き、この中から一校だけしか準決勝に進めないというのは、とてももったいない気がしました。私たちの句もどこにも負けない自信がありました。しかし見事勝利したのは沖縄県立浦添高校の句。この俳句甲子園の中で出会ったたくさんの句の中でも、とくに記憶に残る素敵な句でした。浦添高校のリーダーの方のお話に引き込まれ、胸にすっとせまるものがありました。ウェルカムパーティーのときにも席が近く、高校同士で交流させていただきました。自分たちは負けてしまったけれども、準決勝で頑張ってきてほしいと思いました。
 
 ここから先は私たちが見た試合の感想や見解、自分たちに足りなかったものなどの反省などを記させていただきます。
 準決勝第一試合は愛媛県立松山東高校Bと東京都開成高校Aの戦いでした。兼題は「指」。メンバーは違えど、昨年の決勝戦の高校同士の戦いです。3対0で開成高校の勝利。開成高校の決勝戦進出が決まりました。
 準決勝第二試合は京都府洛南高校Bと沖縄県立浦添高校の戦いでした。兼題は同じく「指」。熱いディベートを披露する洛南高校と敗者復活で勝ち上がってきた浦添高校。とても白熱した戦いでした。3対2で洛南高校が勝利をおさめました。
 ついに決勝戦です。対戦は東京都開成高校Aと京都府洛南高校B。兼題は「紙」です。決勝ともなると俳句の完成度、質疑応答の鋭さ、俳句にこめられた思いも予選リーグのときにはないものがあります。結果は3対1で開成高校の勝利。今年の俳句甲子園の頂点は開成高校に決まりました。

 決勝戦だけでなく、ディベートを得意とする高校の試合も拝見させていただきました。そして敗者復活戦での審査員の先生方の質疑応答には、私たちのディベートにはないものがたくさんあり、たいへん勉強になりました。「ディベートは添削合戦ではない」と審査員の先生方がおっしゃっていました。悪いところを指摘するのではなく、相手の句を好きになり、それをよりよい俳句にしようというのがディベートの目的です。さまざまな高校の試合を見て、旭川東にも取り入れたいと感じる素敵なディベートを見ることができました。

 ディベートを通して出会った句、個人賞の発表で知った句。作句の面でもとても勉強になった二日間でした。今年の旭川東の句は叙情的な句が多いとのことです。最優秀句などの句を見て、私たちは「もっと大きなものを詠みたい」と思いました。景が目の前に広く大きく浮かび、感情や物語が自然と心の中に生まれてくる。そんな俳句をこれから作っていきたい。もっと素敵な句に出会いたい、作りたい。私たちの大事にしてきた「俳句愛」がよりいっそう深まる二日間となりました。
 そして熱い戦いを終えたあとのフェアウェルパーティー。全国の高校生俳人との和気あいあいとした交流の場となりました。なんと俳句甲子園のうちわを作っていただき、そこにメッセージや俳句を書きあったり、審査員の先生にサインを頂いたりしました。メンバーにとって一生の宝物になりました。
 審査員の先生が「正岡子規には彼と親交のあった夏目漱石、彼を兄事していた高浜虚子がいた」。そんなお話をしていました。俳句は交流がなければ上手にならない、発展しないものなのです。全国の高校生と俳句について語り、親しくなって、そのことを実際に感じたフェアウェルパーティーでした。

 移動も含め、松山での四日間はたいへん充実した日々となりました。今年でリーダーは引退となりますが、俳句経験ゼロの一年生に俳句の楽しさを教えてくれました。実際に俳句の聖地松山で多くの素晴らしい俳句と出会い、「俳句愛」がとどまることを知らずふくれ上がっております!!それが冷めないうちにこれからの俳句活動、来年の俳句甲子園に向けて日々努力していきたいと思っております。
 俳句甲子園にかかわるすべての人に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


八月二十八日に想真唯愛とありあの二人でリレー小説を書きました。
・テーマ「秋」
・参加者~想真唯愛(水色)、ありあ(オレンジ)、合作(ピンク)
・一人持ち時間3分(合計7周)


 あるよく晴れた秋の日のことだった。私は何もない通学路を「ひとりぼっち」で歩いていた。今日は「ひとりぼっち」なのだ。なぜ私がこんなにも「ひとりぼっち」を強調するかというと、今日は初めて通学路を「ひとりぼっち」で歩いているからだ。「ひとりぼっち」の理由は言いたくないので言わないことにするが、今日はとにかく「ひとりぼっち」なのだ。それ以外の何ものでもない。ただ、私のよこを小さな猫が通り過ぎた。その子猫が私に向かって小さく鳴いた。間の抜けた鳴き声だった。小さなしっぽをゆらしてその猫は私を置いて先に行ってしまった。私はまた「ひとりぼっち」になった。
 今日は7時に起きた。朝ご飯は食パンにマーマレードをかけて食べた。友達にもあいさつした。小テストも好調だった。しかし事件は起きた。私の家にいたペットのインコがいなくなってしまったのだ。私が小学生の時からずっと大事に飼っていたインコのぴーちゃんが、突然いなくなってしまった。それに、そのショックから立ち直れずにいた私をなぐさめにきた友だちのみゆにも怒鳴りつけてしまい、冒頭に戻る。「ひとりぼっち」になってしまったのだ。
 あの猫がぴーちゃんに何かしたんじゃないか、そんな風に
思った。ぴーちゃんの背中には愛らしい水色の羽毛の模様があった。先程の猫の口の周りが水色っぽく見えたのは気のせいだろう。かき氷を食べたあとの口みたいだった。ぴーちゃんの羽はかき氷のシロップでもない。
 頬ずりするとやわらかく、ぴーちゃんはキューと鳴いた。3歳下の弟はぴーちゃんに噛まれたら怖いと言って、私たちの行動をいつも見張りでもするかのように私たちの行動をいつも
見張りでもするかのように私について回り、ぴーちゃんが何かをしゃべるだけで逃げ出していた。そんな弟がかわいくておもしろくて、ぴーちゃんに何日、いや何週間もかけ弟の名を覚えさせたりもしてみた。でもそんなぴーちゃんは今はいない。みゆに何て言って謝ればいいかもわからない。今日の私は最低だ。だから「ひとりぼっち」になったのだ。
 駄菓子屋の角を通り、家に向かう並木道に出る。3時間目の体育の授業のマラソンで私は転んでしまった。黄色いスニーカーが少し汚れている。その時もみゆは私を優しく気づかい、大丈夫? と声をかけてくれた。そんなみゆに私は何も言わなかった。言えなかった。今日はいつだってぴーちゃんのことを考えていて、今日のみゆの顔がちっとも思い出せない。最終的にはどなりつけ、みゆを自分からつきはなしてしまった。それなのに今さらごめんなんて、とてもじゃないけど言い出せない。ため息が出る。息は期待したほど白くはならなかった。いつもどおりの透明だ。みゆがとなりにいない。
 道の途中の児童公園に、桜の木がある。今はもちろん桜は咲いていないが、秋でも桜の木は桜の木だ。私とみゆは小さい頃から一緒だった。あの桜の木でおままごと、花のかんむり作りをした。大人になるにつれ、桜の木の下での二人の時間はおしゃべりやテスト勉強となった。

 そんなたわいもない会話や、みゆと一緒に過ごす時間が私は大好きだったのに、私は、私はそれを、自分の手でこわしてしまった。自分でそれをまたつなぎなおせる勇気も自信も力もないのに。ぴーちゃんだってきのう確かかごの戸をあけっぱなしにした気がする。ぜんぶ私のせいなのだ。
 ……あれ? 
 わけもわからず涙が出てきた。

 桜の木、今はかれ葉がいくらかついている木の枝に、白い鳥がとまっていた。鳥はキューと鳴き、翼をはためかせた。水色の羽がふるえるようにはばたき、私のほうに向かってきた。私が手をのばすと、私の指にぴーちゃんは着地した。ぴーちゃんの細い脚が私の指をつかんだ。少しくすぐったいけれど、なつかしい感覚だった。私が頬ずりすると、ぴーちゃんはきゅーと
鳴いて、嬉しそうに覚えたての言葉をいくつかしゃべった。
 ぴーちゃんがいた。ぴーちゃんが見つかった。私はそれでまた泣いていた。ぴーちゃんと触れている頬にも、涙が流れる。それでもぴーちゃんははなれない。あたたかかった。
「大丈夫?」
 聞き覚えのある声。今日のマラソンを思い出す。あの声と同じだ。

 会いたい人にもう会えた。それも同時に。振り向くと私と同じ制服を着た少女が立っていた。みゆだった。
「大丈夫?」
 彼女はもう一度たずねた。私が肩に手をそえると、ぴーちゃんは素直に私の肩にとまり、それからはなれることはなかった。
「ありがとう」
 その一言はみゆに向けた言葉であり、ぴーちゃんに向けた言葉でもあった。みゆは何もいらないというようにやさしく首を左右にふった。

「いいの。黙っていたのに何も知らないで話しかけた私がわるかったんだよ。ごめんね」
 私が先にいおうとしていたのに、みゆは私に謝罪をする。
「やめてよ、私のほうがわるいから、気にしないで」
 急になんだかはずかしくなる。
「その子のこと、探してたんだよね。私の家の前を朝とんでから、教えてあげたかったんだ」
 それならなおさら私が悪い。

「ごめんね」
「もう謝らないで」
 ぴーちゃんがきゅーと鳴き、私たちの頭上をとび回った。それから木のてっぺんにとまり、動かなくなった。町には夕焼けがさしてきている。
「話したいことがたくさんあるの。」
 みゆは私に言った。私たちはうなずき合って木の下のベンチに向かう。落ち葉がかさりかさりと音をたてた。もう手袋やマフラーが必要だろうか。
それはいらないだろう。
 体の中心がほのとあたたかった。二人の耳に響く声もあたたかった。すべてがあたたかかった。私たちは日が暮れるまで、昔に戻ったように話し続けていた。End

『俳句甲子園ホテル句会』

俳句甲子園全国大会が終わった日の夜、ホテルにて句会をしました。自由詠と兼題「蛇」の二句投句。選は三句。
参加者はチームメンバーの堀下、池原、木村、渡部、矢崎、
さらにゲストとして、群馬のS川女子高の林さんがご参加くださいました。





秋の空りんごとごりらのちがうとこ(渡部)【木】
・ひらがなだからしりとりのことかなって分かる。(木村)
・動詞性があった方がいい。(林)

風蘭や先生のサインのくづれ(堀下)【木】
・松山来る前なら入れなかった(笑)(木村)
(註:堀下がフェアウェルパーティーで色んな先生のサインをもらってきたから)

青蜜柑夜明けしづかに待ちゐたり(池原)【林・矢】
・出荷を待っているんだ。一日一日熟れておいしくなってるんだろうな。(林)
・取り合わせかと思った。(木村)
・取り合わせにしては合ってない。(林)
・愛媛と言ったら蜜柑でしょ。だから作ったの。一物。(池原)

初秋や席替えのくじ作りたる(木村)【渡】
・作ってるワクワク。出てくる色のイメージが秋っぽい。(渡部)
・因果になってると思う。(林)

幽霊の先頭をゆく揚羽蝶(矢崎)【林・池・堀】
・夜の感じがする。(池原)
・蝶は不吉を運ぶ。(矢崎)
・綺麗で神秘的なものと幽霊の取り合わせに吃驚。(林)
・夜より昼の気がする。(木村)
・黒と白と青が浮ぶ。(渡部)

秋涼し路面電車を追う瞳(林)【池・堀】
・赤や茶色の中の青。(木村)
・凉しは青じゃなくて透明じゃないかな。(堀下)
・「ハウルの動く城」っぽい。(矢崎)

青大将の開口どどと雨の降る(池原)【矢】
・「の」が要らない。青の存在感を生かすために。(林)

塀に蛇靴を拭かうと思ひたち(堀下)【渡・木】
・中七下五が、私にはわかる。(木村)
・「塀に蛇」じゃなくて例えば「尺取虫」でいい。(池原)

夕闇やガムシロップで満ちし蛇(渡部)【無点】
・よく分からない。俳句は分からなきゃ駄目。(池原)

往路にて出会いし蛇の轢死体(林)【渡】
・幸先わるいのがいいなあ。(矢崎)
・道が続いてるのにそこだけ異質……な景。(林)

くちなわに口付をしている子(矢崎)【林】
・定型でもないしどーなのかなと思うけど、何だろうなと想像をかきたてられる。(林)

蛇泳ぐことを信じぬ隣の子(木村)【矢・池・堀】
・「うそだいうそだい、そんなの信じない」ってのはなぜかしら夏っぽい。(池原)
・クソガキは夏っぽい。(渡部)
・クソガキと、隣家の素敵なお姉さんを想像したな。(堀下)
・二人とも高校生、席が隣のイメージで作った。(木村)
・これ、自分は知ってるってのがいい。(矢崎)


林さん、ご参加ありがとうございましたー!

 どうも、こんばんは。管理人の空集合です。
 もう『管理人』と名乗るのも最後となりました。

 本日をもちまして、私空集合は文芸部HPの管理人を一年生の想真唯愛さんに引き継ぎたいと思います。
 我々三年生は引退、という形になります。


 このホームページを発足して三ヶ月程が経ちました。
 まだ三ヶ月しか経っていないのか、と思っています。それほど密度の濃い生活を私は送ってきたのだな、と実感しています。

 元々、このホームページは三割以上、私の自己満足で生まれたものでした。
 発足当初は『こんなホームページに足を運んでくれる人はいるのだろうか』とか、『部員はこのホームページに協力してくれるだろうか』という不安で一杯でした。
 ですが今となっては来場者数様は4500人を超え、部員たちもほのホームページという作品発表、活動報告の場を活用してくれてるようで、本当に嬉しいです。
 みなさん、ありがとうございます。

 これから旭川東高校文芸部がどのような進化を遂げてくれるのか、今からとても楽しみです。
 私の後輩たちなら、ちゃんとやってくれると信じています。

 みなさんも、これからの文芸部がどうなってゆくのかを見守って頂けると幸いです。

空集合/三宅礼華

八月二十六日に開催された平成二十五年度北海道高等学校文化連盟上川支部コンクールの結果を報告させて頂きます。


小説
優秀『子どもの家』 木村杏香(一年)
佳作『砂の城』 内田紗瑛子(三年)
  『好きという感情』 佐藤滉太(三年)
  『キリンキリン夢夢夢』 森レイ(三年)

評論・随筆
優秀『俳人徳川夢声とその四句』 堀下翔(三年)
佳作『競技としての百人一首』 木村杏香(一年)


佳作『カステラ』 内田紗瑛子(三年)
  『満窓の夕焼け』 堀下翔(三年)

短歌
最優秀『雨はすき誰にも言わないこと全部ずうっと言っている雨はすき』 内田紗瑛子(三年)
優秀『帰り道わざとゆっくり歩いてる誰かに後を追われてみたい』 内田紗瑛子(三年)
佳作『秒針の音の感じで一日がもう決まってるような気がする』 内田紗瑛子(三年)

俳句
優秀『揺らしてはゼリーの音のせざりける』 堀下翔(三年)
佳作『あのひとの背中にとまれ夏の蝶』 内田紗瑛子(三年)
  『うららかや子に竹とんぼ買うてやる』 佐藤滉太(三年)
  『はつなつやアドレス帳に君のをり』 三宅礼華(三年)
  『夕焼けやこぽこぽこぽと排卵す』 池原早衣子(二年)
  『立ちこぎをしたくなりけり夏の風』 荒井愛永(一年)
  『夏ぼうし娘に小さき背中あり』 木村杏香(一年)

部誌
推薦『炎』第八十一号

おはようございます、管理人の空集合です。

昨日、今日と松山では俳句甲子園で盛り上がっておりますが、地元・旭川でも盛り上がっていきますよ!

というわけで、遅くなってしまいましたが夏フェスの告知をさせて頂きます。

旭川東高校文芸部は今年、夏フェスに参加します。
(イベントの詳しい内容は旭川UCのブログをご覧下さい)

ここで我々文芸部は、以前告知した部誌、『泉』を配布させて頂きます。

画像

今回は『配布』という形なので、学校祭の『炎』のように料金はいただきません!(なんて良心的!!)

少しでもこの部誌を通して文芸部の活動を知っていただければ幸いです。


十時から旭川マルカツ前(旭川駅から、駅前通りをしばらく行って頂ければわかるかと思います)にて配布予定です。
数に限りがありますので、お早めに来て頂いた方が良いかと思います。

お時間が合いましたら、是非お越し下さい!

俳句甲子園!!

2013年08月22日
 こんばんは三年生・開来山人です。とうとう俳句甲子園本戦が間近に迫って参りました。明日愛媛入りし、明後日、明明後日と試合です。

 練習では顧問をして「今年のメンバーは情熱が違う」と言わしめました。俳句愛にあふれたメンバーです。勝ってきます。勝ちます。

 応援よろしくお願いします。

はじめまして、一年生のありあです。
一年生の投稿が少ないみたいですね、ということでの投稿です。

さて、今週末に松山で俳句甲子園があります。
私も一年生メンバーの一人として出場してきます。
あらためて再び、私たちのリーダーが投稿してくれると思うので、今回は一年生を代表してお話させていただきます。(勝手にごめんなさい)

一年生は俳句甲子園初出場です。あたりまえですね…。そして、全員が文芸部に入るまでは俳句とは全く無縁の生活をしていました。
初めて俳句甲子園というものにふれたのは、春に旭川のAshというところで先輩たちが行っていたディベートでした。その様子を見て衝撃を受けた一年生は、私だけではないでしょう。
たった十七音のなかに自然の風景から豊かな感情までをもこめることができるのだなぁと思いました。自分たちで作り合ったり、高校生からプロの方々の俳句の鑑賞もしました。いろいろな面から俳句にふれあってきました。

全国の高校生の句とディベートのレベルの高さには、私たち一年生の力は到底かなうはずがないでしょう。しかし、初めてだからこその純粋に俳句を楽しむ気持ち、初心を忘れずがんばってきたいと思います。

それでは~

第四回メール句会

2013年08月17日
『第四回メール句会』
・八月十七日実施
・兼題無しで二句まで
・選は一人三句




店番の人と見てゐる花火かな(開来山人)/四点句
・どうせ誰も来ない店。花火大会の喧騒が遠くにある。けど店番を放り出すわけにはいかない。…そんな人のために、わざわざ店に寄ったのか、あるいは偶然会ったのか。店番のひとは、見ず知らずだって、この景は成り立つ。(詠者より)
・バイトですかね?いいねー今年は受験のため花火なんて一度も見てねーよ/小鳥
・物語になってて素敵。世間話が聞こえてきそうです/ありあ
・どんなお店の店番だろう? 屋台でしょうか? 普通のお店? なんだか楽しそうです(*^^*)/想真唯愛
・雰囲気は感じるけれど関係性がつかめませんでした。/ひねもす
・景が浮かびやすくて素敵です。/空集合

非常階段駆けおりて雲の峰(ひねもす)/四点句
・先日マンションのエレベーターが一時使えなくなりました。ありがたみは失ってから気付くものですね。(詠者より)
・なんだか夏の爽やかな感じがします。雲の峰っていう季語もぴったり。/空集合
・階段を駆けおりるときは視線が下に行っていたのが雲の峰で一気に上へ行くのがいいと思いました/雨宮寧々子
・駆けおりるよりも駆けあがる方が夏、雲の峰っぽい/むみゃ~
・この取り合わせ好き。駆けおりると、階段がドタドタいう。このドタドタに季感があると思うんだよな。/開来山人
・古臭くて錆びたやつ想像しちゃったからそこが抜けることしか考えれなかった。ごめんなさい/小鳥

夏草に鞄と帽子投げだして(ありあ)/三点句
・投げだしてで、これから思いきり遊ぼうとしている予感。(詠者より)
・やりたい。ひなたぼっこしたい。/ひねもす
・爽やかで素敵ですね!好きです。鞄と帽子、っていう小道具がまた素敵。/空集合
・爽やかでそのあと走っていくようなイメージがしました/雨宮寧々子
・だーいぶ!ってしたいですね。コーチャンホーの近くの公園がおすすめだよ♪/小鳥
・選句しようか迷いました…すごく爽やかな感じがして好きです(*^^*)/想真唯愛

盆踊り貴方と対角線にいる(里久)/三点句
・うちのところの盆踊りは円になって踊ります。見たい人の反対側にいるのが一番その人を見やすいんです。障害物は色々ありますが…。(詠者より)
・この句好きです。どこにいるんだろうって探してしまう感じ。/ありあ
・貴方と対角線。きゅんとしますね。/空集合
・そんなこと言ってみたいです! でもたぶん無理(私が踊らないから)笑/想真唯愛
・shall we bon dance/ひねもす
・ほらそこには貴方と君を結ぶラインがあるんじゃないですか。駆け抜けろ!やっぱ夏は恋ですね!/小鳥
・貴方でなく君でもたぶん問題ないとこだと思う。だったら君にして定型を守った方がいいと思うな僕は(^o^)//開来山人

神主のいない社や夏の雨(むみゃ~)/三点句
夏目友人帳俳句です(多分)神主がいない社=神の降りない社=誰も来ない神社
其処に雨宿りしてる感じです。春の雨は誰も来ない=静かとつきすぎかなと思い,秋の雨は降りやんでもスッキリしない,冬は雨っていうより雪,だから夏の雨。梅雨や夕立はイメージと違う(ヾ(´・ω・`)(詠者より)
・あっこれすきだ。昔急に雨降ってきて神社で雨宿りしてたなぁ/小鳥
・雰囲気がいいと思いました。不思議な話が始まりそうです。/雨宮寧々子
・なんかデジャブを感じます。実際にこんなことありました(笑)実景だったらいいなあと勝手に思いました。/想真唯愛
・社と雨ってなんかいいですね。神主がいなくて社がさらにシーンとしてるのに雨のザーって感じが…。夏の雨ってザーですかね。/里久
・ひっそり狐につままれそう。/ひねもす
・あっこれすきだ。昔急に雨降ってきて神社で雨宿りしてたなぁ/小鳥

初恋の人は変わらず花氷(ありあ)/二点句
・恋の句って中庭以来です。(詠者より)
・こおりづけの花と初恋の想いが一緒なんですね。素敵です。/ひねもす
・そーか、そーなんだ。初恋の人が変わらないのは、四つの辺がある三角形がないことと同じ関係にあるわけだが、この発見は冴えてる!/開来山人
・初恋か…部室で語ったよねー笑。氷と変わらないの組合せはいいとおもいました/小鳥

片付けたあと逝く夏の車庫となる(開来山人)/一点句
・○○の□□という表現の仕方があるな、と気づいて、この形をいろいろ試している。(詠者より)
・夏休みも終わるしさみしいなぁ。/ひねもす
・いくの漢字あってる?夏の車庫にはいったい何がつまっているのでしょうか。/小鳥

夏休み黒板消しの白きまま(空集合)/一点句
・某先生の講習のあと、必ず黒板消しが白くなるんです。たとえ夏休みだとしても、黒板消しはちゃんとクリーナーで綺麗にしなきゃだめですよ。(詠者より)
・クラスの男子を思い出してしまいました笑 夏休みと黒板がつかずはなれずで合ってると思います。/ありあ
・うっかり落としたときの絶望感。/ひねもす
・ういーんしようねーういーん。でも着眼はいいんじゃないかなー/小鳥
・夏休みらしすぎる感じ!/開来山人

神様に打ち上げ花火は小さくて(雨宮寧々子)/一点句
・花火大会が近所であったので見たら、ショボかったんです。拍子抜けしました。神様だったらもっと大きな花火でもショボいと言うだろうなって思いました(詠者より)
・スケールデカい! 愉快!/開来山人
・一人の人間としては大きくあってほしいですが。/ひねもす
・なんか淋しいってきがしたなぁ。ちっぽけなんだって思っちゃう/小鳥
・わたしたちには大きくても、神様には小さい。発想が驚きです。/ありあ
・神様ってどれくらいの大きさなんでしょうね? あと関係ないけど花火の句が多いですね笑 人のこと言えないけど…/想真唯愛

更衣姉の残り香追い出しぬ(ひねもす)/一点句
・姉妹がクローゼットを共用して上が一人暮らしを始めた結果。(詠者より)
・私も最近姉ちゃんが一人暮らしへ戻りました。私は残り香を追い出したりはしませんが、夏なので風で消えちゃいますね。/里久
・姉俳句だー。追い出しぬって表現が好きだよ/小鳥

夏深しくちびるを桃色で描く(想真唯愛)/一点句
・くちびるって何でだいたい決まって赤でかかれるんでしょうか? 気になります。(詠者より)
・描くという言葉に想像が膨らみました。口紅塗るのを例えたのかもしれないし、絵を塗るのかもしれないし。気になりますね。/里久
・夏に自画像をイエローで描くなんちゃらみたいな句を思い出しました。中七下五が春っぽいなと思ったので季語に意外性を感じました。/ひねもす
・赤い口紅はまだまだ早いけど桃色だったらしてたら「おっ?」ってなっちゃうかもです。/小鳥

織姫性恋愛至上主義病(小鳥)/一点句
・恋に恋する系女子は織姫なんてなれない!と思ってるのではないでしょうか。ですから彼氏に恋する人の(しかも遠距離恋愛の)恋愛至上主義はもはや病気ですね。ごめんなさい。(詠者より)
・○(丿 ̄ο ̄)丿あれですね,超遠距離恋愛 一年に一回しか会わない人ですね /むみゃ~
・恋愛は距離の二乗に比例するというやつでしょうか。笑/ひねもす
・こういうのも嫌いじゃないです。/空集合
・漢字ばっかりですね…/想真唯愛

ブランコや転校生と二人乗り(里久)/一点句
・ブランコに二人乗りするのって親しい人とだと思うのです。転校生と乗るっていうドキドキした感じを出したかったんですけど…あんまりですね。(詠者より)
・ブランコって二人乗りできるんですか?/むみゃ~
・うちとけるの早くてよかったね。/ひねもす
・すごっ女の子?ねー異性とかね?転校生と乗るってところが心の広さとか親しみやすいとか思います/小鳥

赤茄子を一部屋一部屋くらいけり(茂樹マックス)/一点句
・一部屋って数え方ってわけではないよね?表現が面白いなぁーすきだよ/小鳥
・トマトに部屋というイメージを持ったことがなかったのでおどろきました/ひねもす

街灯を流れぬ星といつてみる(雨宮寧々子)/無点句
・流星群見ようと思って山奥へ言ったら曇り空でした。街灯がひとつふたつ見えたのでもうあれでいいやって思いました。季語は流れ星とかにしようと思ったんですけどどうなのかわかりませんでした。(詠者より)
・流れぬ星なら一等星くらいに言ってもいいんじゃないかなぁと思いました。/ひねもす
・流れない星!近くて手を伸ばせば届きそうでいつでも見れる。いいですねぇー/小鳥
・流れぬ星って季語の使い方初めて見ました。それとも街灯が季語? 手元に歳時記なくて調べれませんでした。/想真唯愛
・ニヒル!「街灯は夜霧にぬれるためにある」(渡辺白泉)を思い出す。/開来山人

揚げ花火左手の切り傷眺む(想真唯愛)/無点句
・このあいだ打ち上げ花火を見ました。きれいだったのですが、少し前に切った左手の傷が気になってずっとそればかり見ていました。(詠者より)
・花火と傷は結構合うかもと思いましたが自傷ならいやです。/ひねもす
・やっぱ使うなら左だよね。切り傷だと危険なかおりがしますよー/小鳥
・花火のときに切り傷は眺めないかなーと思ったり。痛むとかでもよかったと思うんだけど、それだと傷と近いし……花火と傷っていう取り合わせは好きです。/空集合
・花火で明るくなったから傷を眺められる、とゆうことだろうか。ちょっとピンとこなかった。/開来山人

夏野菜肉は食べないバーベキュー(むみゃ~)/無点句
・夏野菜美味しい肉要らないって句です(詠者より
・食べねば。/ひねもす
・バーベキューって野菜のイメージが夏野菜じゃないんだなぁ。ベジタリアンだー/小鳥)
・少し夏夏しすぎる感じが。というかバーベキューって季語じゃないんですね……夏の季語っぽいなーって感じがしたんですけど、調べたら違うっぽいです。少し驚きました(どうでもいい)/空集合

満天の花火になりぬ地縛霊(茂樹マックス)/無点句
・なにか、ふっきれたのだろうか。/ひねもす
・解き放たれたってことかな?なんか成仏よりかは殲滅って感じがしちゃった。ごめんね/小鳥

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打水を終へ写真屋に向かひけり

花柚子や海の出てくる紙芝居

夏の風邪ガラスに匂ひあるらしき

第一幕キャベツ抱ふる人の立つ

涼しさや宛先に沖縄と書く

夕立の奥のからくり時計かな

薄墨に触るれば真水明易し

髪洗ひ夢は戦士と思ひけり

ラジオしきりに逝く夏を伝へけり

ポスターにわたしの名前星涼し

 近作で気に入ったのをまとめ、幾つか新たに足した。
 昨日、若干のリニューアルを迎えたHP。その更新第一弾である。ブログ形式になって、更新をtwitter上で告知できるようになった。これまでは広報として利用してきたブログが、もう一つ、部員の作品を積極的に世に出す場にもなるわけだ。さらに、ブログになって、コメント投稿も可能になった。作品を目にしてくださった方、ぜひご批評を残していってください。

どうも、管理人の空集合です。

先程までHPの仕様変更作業をしておりました。
ブログの連投、申し訳ありません。かれこれ10記事くらい更新したでしょうか……。


さて、見た目では少しわかりにくいですが、HPの仕様を変更致しました。

この仕様変更により部員の作品もブログという形で投稿されるようになりました。
それに伴いまして、部員が作品を投稿した際は旭川東高校文芸部公式Twitterにて投稿のお知らせを自動ツイート致します。
(蛇足ですが、文芸部Twitterのフォロワーがもう少しで100人だそうです。まだフォローしてない方は是非!)
また、ブログのカテゴリー分けを行うことで今までブログの閲覧をしやすくしています。

なにかご要望や気付いた点などがあればお問い合わせに投稿頂ければ幸いです。


まだまだ迷走中の旭川東文芸部HPですが、これからも見守って頂けると嬉しいです。

画像

初夏のいへ紙のにほひに充たさるる 

網戸越し四人でゴレンジャーごつこ 

表紙だけ旧字の本や仏桑華 

抽斗の底に指あと明易し 

枕あつめて水無月の戸を閉めよ 

峰雲や短く切れた紙テープ 

手品師の取り出す紙と団扇かな 

夕焼や俳優二人出くはして 

白蓮や初版大正十二年 

夏の海何かを思ひ出したかほ 


 俳句甲子園に向けて、たくさん作った。あまったもので好きだったのと、あと、別に作った一句を足して、まとめてみた。

夏の日やみな前髪を切ってきて

伸びきった肢体に受ける青嵐

十七歳のスカート軽し罌粟の花

夕立に呼ばれて我は生まれけり

ちょっとだけあの人が好き青岬

「おべんきょ」は好きじゃないのよダリア咲く

静脈をなぞつてゐたり熱帯夜

夏草やいつそ不良になれたなら

ベクトルの問題解かん日の盛り

十七の数は美し紫陽花忌

春画AV官能小説ソーダ水

クロゼットにレース思いのほか多く

スカートを脱ごう裸足で眠ろう

ただ今日を生きられればと夏の朝

白靴や恋より欲しいものがある

恋バナの尽きてしまひぬ半夏生

戦場でグラジオラスを育てたし

 ちょうどよく日の差す窓際の席で、しかも昼ごはんを食べたあとなら、まどろんでもそれは仕方のないことだと思う。そのときたぶん幸せな夢を見ていた私は、かれんちゃんという女の子から何かを渡されて飛び起きた。というのも、その渡し方が無言のまま蝿叩きでもするかのようだったのである。夢の内容も消え失せて、わけもわからぬままに受けとったそれは、記入済みのプロフィールだった。きっともう返ってはこないのだろうと、今まで忘れていたものだ。ずいぶん前に渡したそれが皺くちゃになって、けれども確かに私の元へ返ってきたということは、かれんちゃんが部屋を掃除したときにでも発見されたにちがいない。なんて運のいい紙きれ!
 そこまで考えるあいだにかれんちゃんとプロフィールを交互に見た。かれんちゃんは、いつだってこの世の終わりを伝える使者みたいな面持ちでいる。今日もやっぱりそうであることを確認し、ありがとうと言いながら手元の紙に目を通した。相手を動物にたとえたら何かという欄に連なった三つのまるっこい字に視線がとまり、首を傾げる。
「くらげ?」
 かれんちゃんの眉間にぐっと皺が寄った。しかしそんな谷も、グランドキャニオンに比べればどうということはない。答えを待っていたら、かれんちゃんはふうと息をついた。
「あんたと話してると重力がなくなるから」
 そう言い捨てて、かれんちゃんはなぜか不機嫌そうに去っていった。私は、私をよく知る人物にこの意味を聞かねばなるまいと思いながら、チャイムの音を聞いていた。


「お母さん、どうして私はくらげなの」
 夕ごはんの最中に思い出してたずねた。母はあと少しで口に入るところだったハンバーガーを落っことして、私をじっと見つめた。きっと、そのひたいの裏では様々な思いが錯綜しているのだろうなぁ。想像しながらフライドポテトをつまむ。私が三回咀嚼した頃に、母はバラバラになったハンバーグとバンズを元どおりに挟みなおして、机を綺麗に拭きながら言った。
「お母さんは、人間よ」
「うん」
「お父さんも人間だったわ」
 だのにどうしてあんたがくらげなの、と、頭のてっぺんからつま先を見る勢いで黒目が上下した。母は、答えどころか隔世遺伝という言葉さえ知らなかった。


「それで、俺に聞くのか」
「うん」
「難しい質問だ」
 ふみと君という男の子の家まで行って、これまでのいきさつを説明してから訊ねた。このひとは考える姿が賢そうなので、ちゃんとした答えを出してくれるような気がした。
「誰に言われたんだ、そんなこと」
「かれんちゃん」
「かれんちゃんってことは、その子はやっぱり、可憐なのか」
 私が黙ってにこにこすると、ふうん、と言ってそれからまた何か考え込んだ。かれんちゃんという情報が何の役に立つのか分からない。
「重力がなくなるって言われたんだろ」
「そう」
「それは悪口なのか」
 私はああ、と納得したようなふりをしてから、馬鹿みたいにまっしろになってしまった脳みそを使ってこたえた。
「ちょっとわからない」
「皮肉なのか」
「私はかれんちゃんじゃないんだよ」
「知ってるよ」
 そんなことは知ってる。とくり返してぶつぶつ言い始めた。考えるときに、ひとりごとを言うくせがあるのを知っている。テストのとき大丈夫なのかと前に聞いたら、テストのときは大丈夫だと言うから、そうかテストのときは大丈夫なんだと言って、以来その話をしたことがない。
 ふみと君が下がってきていた眼鏡を中指で上げた。きっとそれもくせ。
「うん、でも、わかる気がする」
「なにが」
「お前がくらげってことが」
 まじめな顔で言うから、私って案外、くらげだったのかしらと納得しそうになるけれど、こうして陸で息を吸って吐いて、両親が人間である以上、私も人間にちがいないと思い直す。
「つまり、それは比喩的な意味だね」
「お前、比喩的な意味なんて分かるの」
「馬鹿にしているね」
「うん。いや、それでお前、ちょっとこうやってみろ」
 立ちあがったふみと君は背中をちょっと丸めて、手をだらりと重力に逆らわない格好にした。私もならってやってみると、ふみと君が左右にゆらりゆらりと酔いそうな揺れ方をするので、なんだか面白くなって、私も真似しながら室内を歩きまわった。二人でしばらくそれを続けていたら、だんだん客観的に物事を見ることができるようになったのでやめた。
「それで、つまり、お前はこういう感じなんだ」
「なんとなくわかった気がするよ」
「本当?」
「うん、つまり、プログラム規定説みたいな感じなんだ」
「なんだっけ」
 私も適当に言ったから笑ってごまかした。ふみと君がなるほど、と言った。なんにも説明していないのに。
「核心が消えるんだ。なんていうか、ブラックホールに呑まれるみたいに」
「おおきな話だ」
「うん、そうだ。おおきな話だ」
「かれんちゃんすごいな」
「そうだな。かれんちゃんとかいう子には、才能があるんだな」
 うんうん頷いてから、なんの?と聞いたら、さあ、と言われた。ふみと君も結構、てきとうなことを言うのだ。
「じゃあ私は、ふみと君よりおおきい人間なんだ」
「それはちょっとちがう」
「えっ」
「だってお前、それはさ。ちがうだろ?」
 聞いているのはこちらだから、聞かれてもわからない。ふみと君は同じような内容をもごもご喋っている。地方に住んでいるおじいちゃんが入れ歯を取りだしたところを思い出した。でもふみと君はおじいちゃんという年でもない。なんだか不思議だなあと思った。そこで、比喩的な意味を理解した。
「ちがうっていうのはちがうけど」
「じゃあ、ちがわないんだ」
 ふみと君はけらけら笑ってから顔を引き締めて言った。
「いいか、ひとのおおきさっていうのは一つのことじゃはかれないし、比べるものでもないんだ」
 私はぽかんと口を開けてふみと君を見た。時間が止まっている。
「今なにか、かっこいいようなことを言ったね?」
「そう、かっこいいことを言った」
「おお、かっこいいな、ふみと君」
「それほどでもないさ」
 ははは、と笑ってから、例のごとくブラックホールに呑まれてしまったらしく、私たちはたぶん別々のことを考えていた。くらげはおおきいものだ。
「ふみと君は時計みたい」
 そう言ったら、ふみと君はちらりと私の頭のてっぺんを見た。どこか、近くでカチカチいう音がしている。
「それはまた、ずいぶん無機質だなぁ」
「いつも正しく動いてるんだけど、ときどき止まる」
「……それってさっきの話か」
「どうかなあ」
 私は意識して眉を上げた。本当は片方だけを上げようとしたのだけれど、上手くいかなかったみたいでふみと君は苦笑していた。扉の向こうから夕ごはんの時間を告げる声が聞こえてくる。
「母さんにも聞いたらいいよ、くらげのこと」
 私は首を振って笑った。
「もういいよ」
 ふみと君が、なにかかっこいいことを言ったふみと君を見ていた私みたいな顔で、なんで、と聞く。
「だって、私は人間だもの」
 妙にふみと君の表情が消えたかと思うと、そんなことは知ってるよ、と頭を殴られた。でも不気味なくらいやわらかい殴り方で、全然痛くなかった。びっくりしたけれど、ふみと君は特に何でもなさそうに部屋を出た。扉の向こうには私の好きな食べ物がいっぱい用意されていて、ふみと君のお母さんはとってもにこにこして待っていた。いっぱい食べてね、と言った。私は突然鼻の奥が痛くなった。さっきの拳がずいぶんな時間差で効いてきたんだろうと思った。ふみと君の方を向いて、やるな、と言ったら、まあな、と言われたのでまたびっくりした。すでに私にはくらげの毒が回っているのかもしれない。
 夢中で食べる私の隣で、冷凍でも市販のものでもないハンバーグがぼとりと落っこちた。それと一緒に、私の目から何の前触れもなく一匹のくらげが落っこちて、木製のテーブルに吸いこまれていった。そこでようやくはっとした。目頭はもう死んでいた。

 こんな手紙が届いた。
〈みのりへ ジンジャーブレッド焼いたからおいで。 ようこ〉
 ん、と思って首を傾げた。だって、手紙ということはジンジャーブレッドを焼いたのは何日か前のはずで、メールか電話にすればよかったのに。彼女はたまにこうしてよくわからないことをする。よくわからないまま家を飛び出す私も私で、ちょっとおかしいのかもしれないけれど。
 しんしんと、雪の降る日だった。とても寒くて、マフラーに顔を埋めると目の前が曇って見えなくなった。黒縁で側面にストーンが入った四角い眼鏡。とても気に入っているけれど、こういうとき不便だと思う。
 彼女の家は公園に面しているこじんまりした一軒家だ。それなりに古い建築だと思うけれど、それがおとぎ話のようで(彼女いわくヘンゼルとグレーテルがたずねてきそうで)雰囲気がある。インターフォンを鳴らすと反応はなかった。外出中の場合も考えてドアノブに手をかけると、あっさり開いてしまってぎょっとする。公園はこどもたちの遊び場であり不審人物の溜まり場であるというのに、不用心すぎやしないか。私は後ろ手に鍵を閉めた。玄関は直接居間につながっていて、暗がりの中ではなにかがもぞもぞと動いている。電気をつけると確かに彼女だった。
「おそかったね。もう、冷めちゃったよ」
「なに、この部屋」
 一歩踏み入れると、ひんやりした空気が足の裏から冷やしていった。家主はブランケットにくるまって腕をさすっている。
「ストーブ、壊れちゃって」
 呆れて何も言えないまま立ち尽くしていると、彼女は上がってよ、と言った。ストーブが壊れたにしたって、こんな冷蔵庫みたいな家冗談じゃない。彼女は痺れを切らしたのか玄関まで来て私の手を引いた。氷のような手だった。
「つめたいよ」
「魔女みたい?」
 振りかえった顔は得意げに笑っていた。意味が分からない。居間のソファに座らされ、彼女がくるまっていたブランケットをかけられると、いくぶんか暖かくなった。
「キャラメルマキアートとミルクティーどっちがいい」
 彼女は台所から顔を出しながら聞いた。
「ミルクティー」
「ごめんね、ミルクティー切れてるの」
「なんで聞くのよ」
「あるかなぁと思ったから」
 コンロの火がつく音が聞こえた。私はちいさくため息をついてソファに凭れる。やかんをほったらかしてきた彼女は、さむいさむいと呟きながら私の向かいに座った。ブランケットを返そうとしたら押し戻される。なんなんだ。それから私の視線が机の上のあるものに注がれていることに気がつくと、ちょっとにやにやしながら頬杖をついた。腹立つ。
「やっぱり眼鏡の方がいいね」
「ありがとう」
「それね、こないだ久しぶりに予定が合ったから、一緒に出かけたときの写真なの」
「ふうん」
 気のない返事をしても彼女が声を弾ませるのに違いはなかった。そうくんと、そうくんの、そうくんが。何度も何度も聞かされる名前をもつ男に私は会ったことがない。知っているのは、彼が黒縁眼鏡をかけているということだけ。
 彼がいかに魅力的な男性であるか話すあいだ、私はその話を耳に入れて適当な相槌を打つだけのからっぽな容器になっていることを、彼女は知らない。だからこそ、今だって頬をゆるませその口は三秒と閉じないし、そんな気づかいができるにんげんならとうの昔に私との縁は切れていると思う。ひとの気もちに鈍なのは罪だ。
 そんなに遠くないところで、ぴいいいと鳴くような音がした。台所に行った彼女はカップと皿をふたつずつ持って戻ってきた。皿の上にはジンジャーブレッドと思しきものが乗っている。
「いつ焼いたの?」
「今日だよ」
「嘘」
「嘘じゃないよ」
 間延びした調子で言う彼女はフォークでちいさく切ったそれを口に運ぶと、わりとぬるい、というなんとも微妙な発言をした。今日だとしたら、彼女はあの手紙を直接郵便受けに投函したとでもいうのか。疑問符が消えないままカップの中をのぞき、思いきり眉を顰めた。
「ホイップ浮かべるとおいしいの」
 表面は甘党の彼女にすっかり侵されていた。恐る恐る、ひとくち飲んでみる。腐ったみたいに甘い。
「……いつもこんなの飲んでるの?」
「うん」
 食べかけのジンジャーブレッドを見て、それから、まだ足りないのか自分のカップにこんもりとホイップを乗せていく彼女を盗み見た。このお馬鹿さんがなんらかの病気でしぬのも時間の問題だろう。私は気付かれないようちいさく笑った。
「あ、そういえばさっきの続きなんだけど、そうくんね」
「あのさぁ」
「なあに」
「その名前変えてくれる」
 冷えた声と裏腹に、頭だけがひどく熱い。ほかの熱がぜんぶ一ヶ所に集まったみたいだ。彼女はちょっと驚いたような顔をしている。
「どうして」
「やだから」
「みのりは、そうくんの名前がきらいなの?」
「きらいっていうか、うっとうしい」
 今なら聞こえないものまで聞こえるような気がした。彼女はなにやら難しい顔をしながら、ホイップをかき混ぜて溶かしている。しばらくしてから思いついたようにぱっと顔を上げた。
「わかった。これからは、そうくんのことをみのりと呼びます」
 何がわかったのか知らないが、彼女は何事もなかったかのようにふたたび話を始めた。みのりと、みのりの、みのりが。さっきより大分ましになったけれども、いつまでもゆるんでいる頬はやっぱり腹立たしい。
 ホイップを鼻につけていることにも気がつかない彼女にとって、この空間と時間は本当に存在しているのだろうか。私にはわからない。アインシュタインにだってわからないだろう。今私と人形をとりかえたとして、ようこが何を失うのかということも。
 甘ったるい匂いが、密室の中のふたりを死に近づける。じわり、じわり。ゆっくりと、着実に。

蛇穴を出づ装苑の新刊号

木蓮やレターセットを選びをり

遠足や初恋の実らざりけり

不定詞は未来のニュアンス夏はじめ

黒水着皆折れさうな肢体もつ

難聴の耳にも夏の海の音

白靴やきれいに脚の伸びてをり

蓮池は人を喰つたやうに静か

秋鏡狂気に支配されし顔

曼珠沙華辿れば有田陶器市

ヘアピンをはずす帰路かな高き空

「くんできた」皿に寒卵の多く

傀儡師の瞳だあれもみていない

血餅を磨きおとして水澄めり

雨の日の熱田神宮秋の蝶

朧月「好きって逆から言ってみて」

冬来たる甘えるように話す人

網窓と猫とシイツと血のにほひ

蛇穴を出づ吾が身は成り成りて

真っ白な夢をみている熱帯夜

春疾風髪飾りなどいらぬ髪

過ちを花葬したるや春野原

聖五月パニエと真っ赤なリボンだけ

絵に描いた星が好きなのアマリリス

妹の夏服何かをはらみをり

夏蝶や仮面舞踏会の支度

浜木綿や開花を待てる息の音

緑陰や女生徒は妖精のごと

花茣蓙にのるは陶器のような足

蚯蚓這ふ否定の否定は肯定なり

数学の追追追試雲の峰

遠雷の鳴るや誰かが破水すらむ

向かひ合ふ双子のつつく金魚玉

人波や襤褸市に先生の本

シャンプーのまへのしづけさ透谷忌

青蔦やおれの魅力を五十字で

冬山家こは嵐寛の付けし傷

ソロバンを手に鼻唄や春夕焼

夏帽に知らない人の記名かな

種選りのきみ断定の語調かな

いまはむかし図書室に春蚊の羽音

安吾忌の発声練習口ちひさ

口笛やさつきまで蟻ゐしところ


 いいねと言われた句に、固有名詞が多いと気づいて、ちょっとびっくりした。

秒針の音の感じで一日がもう決まってるような気がする

湯の底に息を潜める深みどり今日はこんなにしずかな三時

青空を見上げている君の隣でずっとシャボン玉吹いていたい

昔「る」の発音が下手だったのは愛さなくても愛されたから

私では馬の骨にもなれません せめて綺麗な過去をちょうだい

雨はすき誰にも言わないこと全部ずうっと言っている雨はすき

ばかみたく生きづらそうに生きている君がばかみたく好きな私

望んだらすぐに手に入れられるのは不健康なようでごにょごにょ

みたされてみたされてみたされているひとりぼっちの涙のりゆう

何にもないことが強い気がしていた きっとあのときぜんぶ持ってた

きれいごとはぜんぶほんとであるといい いずれほんとはすこしかなしい

さびしさとさよならはとても似ているね だから違うでしょ ねえスナフキン

電話での間の取り方がおそろしく下手ですごめんなさい「え、なんて?」

うりぼうのしましまいつか消えていくあなたの夢も私の熱も

ジャスパーのような苺に噛み付いて酸っぱいだけの真実を知る

 週末になると、彼は決まって私に歌を歌ってくれと頼む。そうして私が歌うと
「ありがとう、やっぱり俺詩音の歌好きだな。あ、もちろん詩音のことも好きだよ」
と、そう言って子供のように笑うのだ。
 そんな彼の声が、笑顔が、私は大好きだった。

*  *  *
 
 彼が目を覚ましたのは、事故に遭ってから三日後だった。
 恐る恐る目を開ける彼を見て、私は思わず抱きついた。
「貴彰さんっ……!」
 彼が目を覚ましてくれた。涙がぽろぽろと流れてくる。
「生きていてくれてありがとうっ……!」
 泣きじゃくる私の頬に彼はキスをした。懐かしさすら覚えるその感覚が嬉しくて仕方ない。  
「本当に、良かった……」
 そうして嬉しさを噛み締めているとき。病室のドアが開く音がした。
「廣田さん! やっと目が覚めたんですね。少し待っていてください。今先生呼んできますから」
 看護婦が微笑み、ぱたぱたと担当医を呼びに行く。呼ばれて来た担当医も、嬉しそうな顔をしてやってきた。
「目が覚めましたか。事故から三日間寝込んでいて、みんな心配していたんですよ。どこか痛いところなどはないですか?」
 もうすっかり見慣れてしまった笑顔で優しく問いかける。が、貴彰さんの返答はない。
「廣田さん……?」
担当医がもう一度声を掛ける。それでも貴彰さんは相変わらずニコニコとしているだけだ。
 私はそのとき初めて、貴彰さんの様子がおかしいことに気が付いた。
 まさか、貴彰さんは――
「これは……。すみません、早急に検査しますね」
 そう言う担当医の声が、ひどく遠くから聞こえた気がした。

*  *  *

 どうして“当たって欲しくない予感”というものに限ってこうも簡単に当たってしまうのだろうか。
 無事に目を覚ましたと思われた私の恋人は、声と聴覚を失っていた。
 医者もこのことは予期していなかったようで、今まで私に対してこういった説明をしなかったことを懸命に詫びていた。だが、私にとってそんなことはどうでもよかった。
 喜んだらいいのか悲しんだらいいのか、自分でもよく分からなくなる。
 検査が終わってベッドに横になる貴彰さんを見ると、そこには当然私の知っている貴彰さんが居て。貴彰さんが声と聴覚を失ったことなんて悪い夢のようにすら思えてくる。
 なんとも形容できない気持ちになっていると、貴彰さんは不意に、医者が用意してくれた筆記具を手にとった。簡単な文字を書いて、私へ差し出す。
“俺が事故に遭ってからずっとそばにいてくれたんだね。ありがとう”
 確かにそれは貴彰さんの言葉だった。私の知っている、優しい貴彰さんの。
 私は今まで何を悩んでいたんだろう。貴彰さんが生きていてくれたことだけでこんなにも幸せだというのに。
 貴彰さんの持っていた筆記具をもらい、ペンを走らせる。今まで散々伝えていたことを本当に貴彰さんに伝える為に。
“生きていてくれてありがとう”

*  *  *

 その後貴彰さんは順調に回復し、二週間くらいで退院する運びとなった。
 声と聴覚を失ったのにもかかわらず二週間で退院なんてやけに早いと思ったのだが、それを貴彰さんに問うと
“大丈夫だから、心配しないで”
と笑って返された。
 久々に帰った家は、以前と何一つとして変わっていなかった。
「ふー、久々だね。ただいま」
 貴彰さんには聞こえてないけれど、そんな声を出してみる。ふと貴明さんを見ると、優しい笑顔を浮かべていた。
 居間に入るや否や、携帯を取り出す。
“取り敢えずお風呂にでも入ってきたら? 病院にいるときはシャワーしか浴びれなかったでしょ”
 そう打ち込んだ画面を見せると、貴彰さんも携帯を取り出し
“そうだね、じゃあお湯入れてくるよ”
と打ち込んだ。
 入院していた二週間、私と貴彰さんの間では携帯を用いたコミュニケーションを確立していた。最初は筆記具を用いたものだったのだが、携帯の方が早いし読みやすいということで結局そちらに落ち着いたのだ。
 二人でしばらく無言の会話をした後、貴彰さんはお風呂に入りにいった。手持ち無沙汰になった私は、溜まっていた洗濯物があることを思い出す。
「洗濯しなきゃなぁ……」
 一人つぶやいて、洗濯作業に取り掛かろうとした。
 ――そこで、部屋の片隅に置いてあったアップライトピアノに目がいったのだ。
 そういえば、週末になったら決まって貴彰さんが私の歌を聞いてくれていたっけ。
 私は貴彰さんが歌を聴いてくれるのがとても嬉しくて。『詩音の歌が好きだ』と言って笑う貴彰さんがどうしようもなく大好きで。
 でも、貴彰さんはもう――
 私は貴彰さんの前で歌うことが無くなって、貴彰さんは私の歌を聴くことがなくなるのだろう。
「貴彰……さん…………」
気づいたら、ピアノに縋るような形で泣いていた。涙が、止まらない。
どうして、貴彰さんが――
考えたってどうしようもないのに、そんなことばかりが浮かんでしまう。
「ごめんなさい……」
 そう呟いた瞬間だった。
 後ろから、優しく体を包まれる。はっとして後ろを振り返ってみると、髪の毛の濡れた貴彰さんが私を後ろから抱きしめていた
 貴彰さんが携帯の画面をこちらに向けてくる。
“ねえ詩音、久々に、俺の前で歌ってくれない?”
 私の歌を聴くことなんて出来ないのに、何言ってるの。
 しかし貴彰さんは優しく笑っている。いつも私に歌を頼むときみたいに。
 私は涙で濡れた目をこすった。
 そんなこというなら歌ってあげようじゃないか。それを彼が望んでいるのならば。
 私はピアノの前に座った。久々に鍵盤に指を触れる。久々すぎてちゃんと歌えるのか心配になる。
 それでも、私は歌い上げなければならないのだ。貴彰さんの為に。

   *   *   *

 歌い始めてからは一瞬だった気がする。自分がどんな歌を歌ったのかかすら覚えていない。
 貴彰さんは黙って私を抱きしめる。声が出せないんだから黙って抱きしめるのは当然のことな筈なのに、その当然のことがどうしようもなく悲しく思えてくる。
 気づいたら頬が濡れていた。
 そんな私を貴彰さんは更に強く抱きしめた。
「貴彰さっ……」
「やっぱり俺、詩音の歌好きだよ」
「…………えっ?」
 遮られるはずのない声に遮られて、一瞬自分が幻聴を聞いているのかと思った。
「だから、やっぱり詩音の歌好きだなあって」
 だが、これは幻聴ではないらしい。でも、
「どうして……?」
「ごめん、俺、詩音に嘘ついてた。実はね、俺が意識を取り戻した三日後くらいにはちゃんと耳も聞こえるようになったしし声も出せるようになってたんだ」
「……なんで嘘なんて吐いてたの?」
「ごめん。ちょっとした悪戯のつもりだったんだ。携帯で会話するのも楽しかったし。……まさか泣かせるとは思わなかった。本当にごめん」
「…………貴彰さんのばか」
 口ではそう言ったものの、本当に嬉しかった。また貴彰さんの声が聞ける。また貴彰さんに歌を聴いてもらえる。
「貴明さんの、ばか……」
 もう一度声に出してみる。それでも涙が止まらなかった。
「本当にごめんなさい。でも、本当に耳が聞こえなくなったわけじゃなくて良かったと思ってるんだ。俺、詩音の歌が大好きだから。もう詩音の歌が聴けなくなると思うと生きていけないかもしれない」
 そう言って、はは、と少年のように笑う。
「あ、もちろん、詩音のことも好きだよ」
 その言葉を聞いて、私は思わず貴彰さんを抱きしめた。

 万葉から王朝和歌、そして近世を経て現代に至るまで、歌に詠まれた対象というのは、殆んどが四季の巡りであり、その中に在る自然であり、そこに生きる人間の生活だった。多くの歌人は、生きている中で得たワンダーを、それを発生せしめた対象物を詠むという形で、われわれに提示してきたのだ。

 しかし筆者はここに、一人の異質な歌人を紹介する。浜田蝶二郎である。大正八年に神奈川県で生まれ、平成十四年で没するまでに七冊の歌集を出版した。蝶二郎は、『われ』を見つめる歌人だった。幾つか引いてみよう。(以下、すべての短歌の引用は『現代の歌人140』〈小高賢/新書館〉による)

・気 疲 れ し て 眼 を ぱ ち ぱ ち す る わ れ の 癖 あ る ひ は 死 後 も 記 憶 さ れ む か

・や が て 死 ぬ 者 が 死 者 悼 む 無 意 味 こ そ や さ し か り け れ 陽 の 照 る こ の 世

 こんなふうに、蝶二郎は他者を詠まない。この世にただ一人しかいない『われ』に情熱を注いだ。もちろん『われ』を主題とする歌は、蝶二郎のもの以外にも存在する。しかしそれらは〈他者を見ている『われ』〉、極端に言い換えてみるならば〈『われ』が他者を見ているという風景〉を詠んだものではないか。例えば日常性をベースに作歌を行う奥村晃作の『七十二、罪なく佐渡に流されし世阿弥と知りぬわれはそのとし』は、『われ』が流刑となったときの世阿弥と同齢であることに対する驚きが、そのまま『われ』の年齢に対する驚きへと導かれている。ここでは世阿弥という対象によって歌が発生した。つまり、この歌は世阿弥とセットでなければ成立しない。

 ここで先掲の二首を見てみよう。
 一首目、自分の癖を挙げて、それは自分の死後、周囲の記憶に残るだろうかと問う。「されむか」という疑問の形をとっておりながらも、蝶二郎は明らかに「される」という確信を持っている。それは「あるひは」(ひょっとしたら)という控えめな物言いから生じた正反対の効果だ。蝶二郎は「あるひは~か」と言い投げており、一見この問いに無関心であるかのように見える。だが蝶二郎はこの問いをわざわざ歌という形に仕立てて、外界に発信している。『われ』に対する確信を表明したくてたまらない、という思いが見え隠れしている。この場合、初めに登場する「癖」はこの歌の主役ではない。『われ』への確信を表明するための数ある方法の中から「癖の提示」が選択されたに すぎないのだ。

 二首目、この歌の中心は「無意味」の語だ。一見ありふれた老境詠に思えるが、この「無意味」がそのような鑑賞を阻止する。ふつうこの歌の状況になったとき、人はまず「やがて死ぬ者が死者悼む意味は何だろう?」という思案をする。その結果として各々の中での意味の有無が導かれるのではないか。しかし蝶二郎はこの段階を無視していきなり「死者悼む無意味」と断じる。ここに蝶二郎の日常的な『われ』への認識が顕れている。

 蝶二郎の歌は、晩年になるに従い、さらに一般的な歌とは毛色の違ったものとなる。幾つか見てみよう。

・誰 に で も 一 対 揃 ひ ゐ る 公 平  生 年 月 日 ・ 没 年 月 日

・身 体 は 一 つ あ れ ば よ く 岐 れ て る 腕 は 二 本 よ り 多 く は 要 ら な い

 個別の鑑賞はしないが、これらの歌は、顕在化された思考そのものだ。そこに景はない。本来、これらの歌が詠まれる原因となった出来事があるのかもしれないが、それらは決して表面化しないし、その必要はない。蝶二郎は『われ』の追求を優先する。蝶二郎にとって肝要なのは『われ』であって『われ』に示唆を与えてくれた自然や生活の営みではなかった。そのようなものがなくても『われ』への認識は存在し得るのだから。

 少しだけ、短歌との比較として俳句のことを考えてみたい。俳句のメーンとなる概念は瞬間の切り取りだ。古今、子規の『柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺』や草田男の『万緑の中や吾子の歯生え初むる』など、名句と呼ばれるものは数えきれないが、それらは殆んど「わたしは~という瞬間を見た」という基本構造に当てはまる。『われ』の見た景を詠むのが俳句であって、俳句で『われ』そのものを詠むことは基本的にありえない。多くの自己詠は『われという風景』に過ぎないのだ。だから俳句で完全な『われ』を詠もうとすると、しばしば「短歌でやるべきだ」という指摘を受ける。

 では短歌は『われ』を詠むことができるだろうか? 歌人は自然を詠み生活を詠む。岡井隆であろうと馬場あき子であろうと栗木京子であろうと、歌人は景を詠む。俳句と短歌の差異は、その景の動きをとらえるメソッドの差異だ。とすると俳句で『われ』が詠めないならば短歌でも詠めないことになる。俳句側の「短歌でやれ」の謂いは、俳句にはなく短歌には存在する時間軸のゆとりが『われ』を捉え得るという発想に過ぎないのである。

『われ』を詠むことの不可能性。この壁を打ち破るのが、浜田蝶二郎の作歌概念だ。今まで見てきたとおり、蝶二郎の歌は景を拒否する。彼にとって歌とは、純粋化された思念を言語化するという行為なのだ。かつて歌をそのようなものだと完全にとらえた歌人はいなかった。そして蝶二郎の死後十年経ったのちも登場していない。

 あらゆる局面での現代化が進み、人の営みはかつてとは別物になった。かつてというのは、和歌が生まれた時代はもとより、現代短歌が成立した時代をも指す。詳しく述べるのは本筋ではないから避けるが、たとえば堀井憲一郎が「若者殺しの時代」〈講談社現代新書〉で示した、どちらも数十年前に過ぎない七十年代と八十年代の間にある社会構造の差異のようにだ。変化の速さは例を挙げるときりがないし、あるいは誰もが知っていることでもある。都市化の中に於いて自然詠は可能か、などといった問題はひとまず置くとしても、変質した社会を生きる個人に対応できる表現論が必要だ。短歌界には俵万智や穂村弘の登場で新風潮が生まれたが、それは単に既存の物とは異なっているというだけで、求められる表現を生み得るかといえば、必ずしもそうではない。『われ』は外部にある存在ではないのである。
 蝶二郎の最晩年の歌を掲げてこの稿を終わりにしよう。

・わ た し 死 ん で ゐ な く な つ た と 感 じ た ら そ れ は わ た し が ま だ ゐ る こ と だ 

「感じ」るのは他者だからこれは二人称の歌である。にもかかわらず、この他者とは誰かということを、おそらく蝶二郎自身も想定していない。二人称という呼びかけの形でありながら、これは完全に概念的な歌だ。概念とはすなわち『われ』の中にあるもので、ほかのどこにもない。「ほかのどこにもない」ものを詠んだ歌人が、蝶二郎のほかにいただろうか? しかし「ほかのどこにもない」ものこそ、これから詠まれるべきものだ。今までにないものを新しく詠めるというのは健康的なことだと思う。そういう意味で、筆者は浜田蝶二郎の名前を喧伝したいのである。

少年の古拙の微笑朝寝かな

たんぽぽやギリシャ神話のやうな空

梅雨晴や彼のエビフライが好き

裸子の細き瞳の潤みをり

後ろから抱かれてゐたり遅日かな

清明の陽や鉛筆はときんときん

冬銀河ノンアルコールカクテルは青

鉄琴のグリッサンド天の川

白熊は虹の色なり若葉風

桜咲く世界が終つてしまふ日も

秋澄むや風の名前を知りたくなつた

ホ長調のカデンツァ咲いたチューリップ

少年の八重歯まつすぐ夏はじめ

蠍座のきらめいて駆け落ち日和

天高し新しい手帳買うように目的のなき散歩に行った

〈ほだす〉とは漢字で書けば〈絆す〉なり不意にわれらの絆おそろし

かもめしか知らない感覚(空を飛ぶ時に自分のうえにあるもの)

[元気か]とのみ記されし絵葉書の消印はパリきみは元気か

にほんいちあなたのことがすきという気持ち(遺伝子組み換えでない)

知り合いに佐藤というやつ四人いて揃って英語の発音がいい

春過ぎぬ今までにないデザインのノートを買っておれはうれしい

教室のカーテンが少し空いていてきっと誰かが空を見ている

【東京の先輩からの賀状】
「きみの夢」こういうふうに言い換えることが出来るよ→「きみの特権」

メル友のふるさとに雪降らざればメールが国際郵便のよう

【茨城の友人に旭川の話をする】
冷蔵庫より寒いじゃあないですか(笑)うるせえ黙れ冷凍庫なり

「香椎由宇」辞書で調ぶれば「貸し売り」のまえにでており春はあけぼの

保健室しんとしており中庭を挟んで向うの教室は午後

「Kの遺書あなたが書いたものみたい そういやあなたのイニシャルもK」

わが姓に土偏の文字あるがゆえ水を飲むとき喉は踊りつ 

夏遠し古地図のうえにわれわれの立ってる点を打ち付けてみる 

【修学旅行4首】
大阪の夜景眺めて「東京の夜は綺麗!」と叫んでしまえ!

【ドラえもん誕生まで丁度百年の夜に泊りし宿】
百十六歳のわたしよまだ君の時代に「旅庵花月」はあるか

京都にて岩手に住んでる佐藤さんとメールしている旭川のおれ

ふるさとで買い得る筆を京都にて買う「行為」とそういうことだ


 短歌は日記だと思っている。実体験からつくることが多いし、そうじゃなくても出発する発想は自分が持っている。詞書も、俳句にはつけないが、短歌には積極的につける。それでも独りよがりな部分は多いから、課題だ。
 好きな歌人は大松達知さん。「ただごと」を追うことが多いのは、大松短歌の影響でもある。ほんとうは仮名遣いも彼に影響されて旧かなにしていたが、どうにも違和を感じる場面があって、いまは考え直した。

縦笛で奏するロンド秋深し

湯豆腐のことを書きたる自伝かな

わつと言ふとき口は開く荷風の忌

水仙や役者の多き芝居小屋

君からの電話裸のままで取る

明月や顔真卿を臨書する

花冷の紙芝居屋の弔辞かな

朝月夜セイコーマートの中と外

狸棲む浄水場の機械音

フルートの巧きラガーとゐたりけり

らむという推量ソメヰヨシノかな

秋雲や吾の味方はみな残れ

楼船にすこしの影や夕燕

四拍子たる意思のあるぶらんこよ

春の宵鸚哥の何か言つたらし

安吾忌の話は可笑しかるべしと

花枇杷や外人墓地をめぐる坂

誰だつたかしらぶらんこの老優

若竹や空まで墨の撥ねてをる

ゴレンジャー立ち去りてのち夏燕

 第十五回俳句甲子園に出てから俳句熱が高まった。出場を契機にではなくて、出場を終えてだ。なるほど俳句っていうのはこんなことを表現できるんだなあと感激して、いっきに俳句形式にほれ込んだ。歳時記を買い揃え、日常の中心が俳句になった。部活だけでは飽かず、メール句会や俳誌に参加した。
 ある高校生俳人からの年賀状に「開来さんの句はいつもおもしろいなあと思っています」とあった。お、面白い、なのかと驚いた。けれども句を「面白い」と形容されたのはこの時だけでなく、それからも何度もあった。だからぼくは最近「いい句」をつくろうとすればまず「面白い俳句」を目指してみようと考えている。
 ここに載せた二十句は 方々の寄せ集めだ。メール句会・俳誌・大会へ投句したもの、未発表句やtwitter投稿句など。

 鉄の塊が、ボクの棲む世界にやって来た。今まで動かない船などが沈んできたことはあったが、今回のはそれらとは少々違った様子だ。
 眩しい。微かな光を感知することに優れただけの目がはじめて光に包まれる。眩しくてよく見えないが、やってきた鉄の塊が発しているようだった。
 その塊はプロペラで水をかき回しながら移動しているのだが、そのプロペラの音がとてもうるさい。
 ボクにとってその塊は不快なものでしかなかった。ボクの全神経があいつに対して拒絶反応を示している。
 仲間たちも本能的な何かを感じたのであろう。塊を避けるように軌道を変える。
 だが塊は、逃げるボクらを追い回すように進んでくる。
 こちらのほうがスピードは速いから逃げ切れるだろうと思ったのだが――一瞬ものすごい光に包まれて、目が眩む。
 水中で何かが振り下ろされる感覚がした。逃げようと思っても、目が開かなくてどっちへ逃げたら良いのかわからない。

 気付いたときには、ボクは見知らぬ場所に捕らわれていた。
 周りを見回すと、一面が明るい。三百六十度どこを見回しても、暗いところなど無い。明るすぎて寧ろ眩しいくらいだったので、また目を閉じることにする。
 ほかの仲間たちは見当たらなかった。うまく逃げ切れたか、別のところに捕らえられているのだろう。
 それにしても周りの音がうるさい。鼓膜が破れそうなくらい大きな音が、やむことなく鳴っている。ひとつはさっきの塊の音。もうひとつは、聞いたことの無い音。
「やりましたね!」
「いや、これからだよ。どうやってこれを浅海に連れて行くかが問題だ。」
 どうやら二種類の聞き慣れない音がボクに向けられているらしい。とてもうるさくて、耳を塞ぎたくなる。
 今自分の身に何が起こっているのだろう。
 少し目を開けてみると、見たことも無い生物がこちらを見ていた。眩しくて、また目を閉じる。
 しばらくしたらボクに向けられ音は遠くなった。多少は耳が慣れたらしく、最初ほど塊の音も気にならない。
 丁度良い気温で少し眠たくなってきたかも――
 気付いたらボクは眠りについていた。


「――そ―――すか―」
「―――、も――だな。」
 向けられた音で、目が覚める。五感がだんだん覚醒してゆき、音がうるさい。まぶたの裏でも明るいのがわかる。
 ゆっくりと目を開けてみたが、眩しくてやっぱり目を閉じる。
「じゃあ、スイッチを入れますね。」
「ああ、入れてくれ。」
 ガチャリ、と一際大きい音が聞こえた。途端にボクの体は今まで感じたことも無い違和感に襲われる。
「水槽の水あ――順調に―――います。」
「よし―くまで―だぞ――は、折角の―実――が――――う。」
 耳がおかしくなる。うるさいはずの音が、良く聞こえない。目は閉じているから視界がどうなっているかは分からない。目は閉じているから視界がどうなっているかは分からない。
 ……気持ち悪い。
 だがしばらくするとその違和感は少しずつ薄れていった。恐る恐る目を開けてみると、やはり視界は明るい。眩しくてゆっくりと目を閉じる。だが眩しさは先ほどよりは薄れた気がした。目もなれてきたのだろう。音もここにつれてこられた当初に比べたら格段に気にならなくなっており、絶えず鳴っている塊の音はもうほとんどその場を流れる空気のようになっていた。
「取り敢えず死んではいなさそうだな。」
「ええ、そうですね。」
「これからどのくらいの期間がかかるかな――」
 そんな音が聞こえた。


 それからしばらくの間、そういった囚われの日々が続いた。水槽の中にはボクの食べるプランクトンがたくさんいたから空腹になる心配はなかった。まあ、そいつの味はあまり良く無かったのだが。
 あのとき感じた違和感は定期的にやってきたが、回数を重ねるごとにそれは薄れていった。
 少しずつ目や耳もこの環境に慣れてゆき、今では眩しくて目を閉じることは無くなった。音も煩いと感じることは無い。最初はあんなに喧しかった鉄の塊が発する音だって、今ではほとんど聞こえない。
 そんなある日のことだった。
「もうそろそろ、ですかね。」
「ああ、もういいだろう。ついにこの日がやってきたのか。」
 ボクに向けられた音。次いで、今まで閉ざされていた水槽の天井が外される。
 ――何をされるのだろうか。
 毎日ボクに向かって音を発していた生物が、ボクの体に触れる。水の外へと出されて、息が出来なくなる。
 台の上に載せられて、体中を触られた。
「小型センサー、取り付け完了しました。」
「了解。それにしても、こいつは俺らがこんなに触っても全然暴れないんだな。」
 今までとは少し違った雰囲気の音。そんなことはどうでも良かった。どう頑張っても息が出来ない。苦しい。
 口をパクパクさせ、えらを精一杯動かしていると、彼らはやっとボクを水槽の中に戻してくれた。いつもの水の中に入り、一安心する。だが、それもつかの間。
「水深五十メートル。ここでこいつを放します。」
「よし。それじゃあ、いくぞ。」
 聞き慣れた音が聞こえたと思ったら、今度は床が外れる。また何かされるのかな。そう思うと、ここから動きたくなくなる。
「――動きませんねえ。」
「大丈夫。ちゃんと動くはずだから。」
 遠くから、そんな音が聞こえる。外された床の外の世界を見てみると、そこには見たことも無い綺麗な世界が広がっていた。ボクの仲間みたいな、けどボクの仲間たちなんか比べものにならないくらい綺麗な者たちが楽しそうに泳いでいる。
 ――――美しい。
 気づいたら、ボクはその世界へと飛び出していた。


 その世界は、光に満ち溢れていた。囚われる以前にボクがいた世界とは大違いだ。
 ボクにはまだ少し眩しくて、目を閉じる。それでも美しい世界がみたくて、また目を開ける。
 そんなことを繰り返しているとだんだん光に目が慣れていって、すぐに目を開けて自由に泳げるようになった。
 こんな美しいところを泳ぎまわれるなんて、こんな素晴らしいことはなかった。
 銀色の群れが目の前を通り過ぎ、青い群れは踊りまわる。
 どうやらこの世界には明るい時間と暗い時間があるみたいだから、明るいときは泳ぎまわり暗いときは眠った。
 ここにもプランクトンはいたから、食べものには困らなかった。
 この世の全ての美しいものを集めたような世界で暮らす、幸せな日々。
 だが、その幸せも長くは続かなかった。


 何度か眠ったある日のこと。ボクはこの美しい世界に一匹だけ、ボクの仲間みたいな汚い者がいることに気づいた。奴は決まって人間が落としていったぴかぴかの板のところで、なぜかボクと同じ動きをする。ボクはそいつが嫌い、出来るだけそこにいかないようにしていた。
 もうひとつ、気づいたことがある。誰もボクに近づこうとはしないのだ。他の奴らは群れになっていたり、楽しそうに二匹でいたりするのに、ボクだけはいつも一人だ。たまに現れる美しい者を襲う怖い者でさえ、ボクのもとへ近づこうとはしなかった。少しずつ不安になってくる。
 どうしてみんなボクから離れてゆくの? ボクが外から来た奴だから?
 もしかしたら、ボクは――――――


 気づいたらいけないことに気づいたとき、ボクは本能的に暗い暗い海の底へと泳いでいた。


 とにかく底へ向かっていた。そこがボクの居場所だと本能的に感じた。あの世界はボクの居るべき世界ではないのだと。
 だから、とにかく底へ。
 なぜだかだんだん体が重くなってくる。苦しい。
 だがいくら苦しくても、底へ、暗い世界へ。
 上には溢れていた光がだんだん弱くなり、音が聞こえなくなる。昔はほんの少しの光でも明るくて、音もよく聞こえたはずなのに。
 だんだん苦しくなって、耐え切れなくなる。何かに上から押さえつけられる感覚。
 そして終に、ボクの意識は完全に途切れた。


「間一髪でしたね。」
「もう少しで、水圧で押しつぶされて死んでしまうところだったからな……。センサーをつけておいて正解だったか。」
 遠くから聞き慣れた、どこか懐かしいような声が聞こえる。
 目を開けようとするが――おかしい。目が開かない。
「目はやられてしまったようですね。」
「ああ……だがどうして海底に戻ろうとしたのだろう?」
「その辺はもう少し研究が必要かと。」
 ボクはまた彼らに捕らえられたらしい。鉄の塊がプロペラで水をかき回す音は聞こえなかったけど。
「それにしてもすごいですね、博士。浅海でも生きる深海魚。遺伝子操作などは一切しておらず、餌と水圧操作だけでそんな奴を生み出すなんてノーベル賞モノですよ!」
「何を言う、まだこれからだよ。我々の目標は『浅海でも深海でも生きられる魚』を生み出すこと、さ。さて、今度はもう一度深海で生きられるよう、徐々に水圧を上げていくぞ。」
「はい。」

 以前何度も感じてきたものにも似た違和感が、ボクを襲った。

 店を辞めてから十年余り。僕は一サラリーマンとして暮らしていた。朝起きて、出社して、働いて、帰宅して、風呂に入って。そうして一日が終わる。時計のように規則正しく短調な生活にはもう飽きてしまったが、こればかりは仕方がない。
 明日は日曜日か。久々に時計屋にでも行ってみようかな――と、そんなことを考えながら、今日も平坦な一日を終えた。

*  *  *

 最近では、街の時計屋もすっかり少なくなってしまった。僕が店をやっていたときはもう少し多かった気がするのだが……。昔のことを思い返したところで、そこに戻れるわけでは決してないのだが。
 久々に、時計屋に入る。店主のおじいちゃんが、俺を見て「ああ、君か」と嬉しそうに微笑んでくれた。
「はい、お久しぶりです」
 僕も微笑み返す。このおじいちゃんは、俺が店を出しているときも随分親切にしてくれたっけ。時計屋に来ると、どうしても過去のことを思い出してしまう。
 色々なことを思い出しながら店内を見回していると、ドアの開く音がした。
俺以外の客がくるなんて珍しい。
 そちらに目をやると、大学生と思われる男性と目があった。
「あっ、あなたはっ……!」
 若者がこんなところへ来たことよりも、相手のその反応に驚いた。相手は僕を知っているみたいだが、僕に大学生の知り合いなんていない。
 僕が固まっていると、相手は一方的に話を進めてきた。
「朝霧さんっ! 俺です、俺っ。ハルキです!」
「ハルキ……?」
 俺の知り合いにハルキなんて名前の人、いたっけ。
「あー……えっと、これ見ても思い出しませんか?」
 そう言ってハルキと名乗った男は、懐中時計を差し出す。一目みただけで、大事に使われてきたのがわかった。よく見たら、上蓋に“To Haruki”と刻印されていた。
 それで、思い出した。
「ハルキって……あの春輝君っ!?」
 僕が店をやっていたとき、六歳くらいの男の子がおじいちゃんに連れられて店にやってきたことがあった。その子供は店のことがひどく気に入ってしまったらしく、それから毎日のように来てくれたことがあったのだ。
 その子供は引越しをしなければならなくなったらしく、俺のところに来てわんわん泣きじゃくるものだから、俺は懐中時計をプレゼントしたのだ。
 そして、その懐中時計がこれだ。
「うん、俺だよ。春輝だよ。六歳のときに、朝霧さんの時計屋さんに通っていた」
「へぇー、懐かしいな。どうしてここに?」
「大学に進学するのにまた戻ってきたんですよ。だから久々に朝霧さんに会いに行こうと思って。でも、よく考えたら俺、お店の場所覚えてなくって……だから、色んな時計屋さんを回ってたんです。朝霧さんこそ、なんで? お店、今日休みなんですか?」
「えっと、それは……」
 いきなり現実を突きつけられた気がした。当然のことながら、春輝君は僕が店をやめたことは知らない。
 横目でちらりと時計屋のおじいちゃんを見る。おじいちゃんは、心配そうな瞳でこちらの様子を伺っていた。
「……立ち話もなんだから、カフェにでも行こうか」
 これ以上おじいちゃんを心配させるわけにはいかないと思った。

*  *  *

「えっ、朝霧さん、時計屋さんやめちゃったんですか……!?」
「うん。僕の母親が急に倒れちゃってね。お金が必要になって。やっぱり、時計屋じゃ生活していくのがやっとだったんだよ。それで、やむを得ずサラリーマンになったんだ」
「……そうですか」
 春輝君が俯きがちに言う。僕はなんと声をかけていいか分からず、沈黙が場を支配する。
「……あの、朝霧さん」
 しばらくして、春輝君が口を開いた。
「俺、時計屋さんを目指してるんです。なので、朝霧さんが暇なときでいいので、いろいろと教えてくれませんか……?」
「ぼ、僕が……?」
 急な申し出で少し驚いた。僕は一向に構わないが、ひとつだけ不安な点がある。
「今のご時世、時計屋なんて大変だよ? みんな携帯で事足りちゃってるし」
「それでもやりたいんです! バイトとかでお金もちゃんと貯めてますし……お願いしますっ!」
 その言葉を聞いて、なんだか嬉しくなった。今時こんなまっすぐ夢を終える若者もいるんだ。
 やはり彼の将来に多少の不安はあるものの、彼を応援したい、と心から思った。
「……じゃあいいよ。僕の住所と携帯教えるから」

*  *  *

 春輝くんは週に一回、土曜日の夜に来ることになった。時間が遅くなることも多く、そのときは春輝君が僕の家に泊まっていく。
 時計のようなつまらない毎日から、開放された気がした。
――時計がきっかけに、「時計のような」日々から開放されるだなんて、おかしな話だ。いや、もしかしたら「時計のような」なんて形容詞は間違っていたのかもしれない。時計はつまらないものなんかではないのだ。
 何はともあれ、僕は週一回、春輝君とこうやって時計のことを話し合ったり、時計を修理したりする時間が楽しくて、その時間が待ち遠しかった。

*  *  *

 土曜日の夜。インターフォンが鳴る。出ると、春輝君が大きな鞄を提げて立っていた。
「こんばんは。さ、早く入って」
 僕がそう促すと、春輝君は失礼します、と礼儀よく僕の部屋に入る。いつまでたっても居心地が悪そうに正座する春輝君に、コーヒーを差し出した。
「さて、今日は何をしようか」
「あっ、俺、家から時計持ってきたんです。古い時計なんですけど、直りますかね……?」
 そう言うと、春輝君は鞄から四角い時計を取り出した。確かに、相当年季が入っているのが見て取れる。こういう時計を見ると少し気持ちが高揚してしまうのは、最早天性なのだろう。
「朝霧さん、どうですかね……?」
「どうですかねって、これから春輝君が直すんでしょ? さ、やってみてよ」
「はっ、はいっ!」
 春輝君が時計裏のネジを外す。すると、時計の動力が見えた。思っていたものよりも古い型らしく、現在のものよりも大分前の動力だ。
「朝霧さん、これ……」
 見たことのない動力に、彼は動揺しているらしい。僕はというと、歓喜に震えていた。こんな時計、久々に見た。まだ見る機会があったなんて……
「ああ、これはね」
 春輝くんに説明をする。それと同時に、僕の手は時計へと伸びていた。

*  *  *

 時刻は午前一時。結局、四時間も掛かってしまった――まあ、僕が調子に乗って色んなところをいじりすぎてしまったせいもあるのだが――。
 時計がカチ、カチと時を刻む。どうやらちゃんと機能しているらしい。
「うわぁ……!」
 僕の作業工程を隣でずっと見ていた春輝君が、声をあげる。
「結局全部朝霧さんに任せちゃいましたね。ごめんなさい」
「いや、全然いいよ。僕も久々にこの型の時計をいじれて楽しかったし」
「そう言って貰えると、俺も嬉しいです」
 二人でははっ、と笑いあう。ああ、本当に僕は時計が好きなんだなぁ、と実感した。
 その後、眠る気にもなれず二人で酒を飲みながら――とはいっても、春輝くんはまだ未成年だからオレンジジュースだったが――色々な話を始めた。
 そのとき、不意に春輝君がこんなことを口走った。
「いやぁ、朝霧さんって本当に時計好きですよね。あんなのいじるだけで、すごいテンション上がっちゃうんだから」
「『あんなの』じゃないよ! あれは相当古い型だから今はなになか見ることができなくて……!」
「ほらーっ! そういうところとか、本当時計好き」
「ははっ! 所詮時計から引いた身だけどね」
 酔いが回ってきて、好きしいい気分になる。自虐的に言っても、心が痛くなることはない。
「……どうして、時計屋さんやめちゃったんですか? 本当に、勿体無いです」
「だーかーらーっ、それは前に説明したでしょ?」
 春輝君の真剣な訴えも、届いてこなかった。
「でも……どうして再開しようと思わないんです? お金は十分あるんじゃないですか?」
 その一言も冷静に受け取る事は出来ず、今度は怒りが押し寄せてきた。もう自分ではどうしようもない。
「……春輝君は何もわかってないね。今時大変なんだよ?」
 少し嘲笑気味になっていたのかもしれない。春輝君の顔にも怒りが広がるのがわかった。
「……わかってないのはどっちですか。本当は時計やりたいんでしょう? やりたいことやって何が悪いんですかっ!!」
 彼の怒鳴り声が、うるさい。
「やりたいことだけやってればいいってわけじゃねえんだよ!」
 気づいたら、口論になっていた。
「だからって夢を捨てるのも良くないと思います!」
「これだからお子様は。気楽でいいよな! 世の中なんて、所詮金なんだよっ。今時時計屋に人なんざ来ないんだよっ!」
「じゃあ朝霧さんは時計嫌いなんですかっ!?」
「んなわけねーだろ! 大好きだよっ!!」
「じゃあ時計屋さんやればいいじゃないですか!」
「っるせーよっ!」
――パシンッ……!
 何かを叩く音が、遠くから聞こえた。その音にはっとし、ふと我に帰る。その音は、自分が春輝君の頬を叩いた音だと気づくのには時間が掛かった。
「あっ……ごめん……」
 怒りで我を忘れていた。他人をひっぱいてしまった。どっと後悔が押し寄せる。春輝君の顔が、まともに見れない。
「すみません。俺、勝手なこと言いすぎました。帰ります」
 春輝くんは、淡々とここから出る準備を始めている。
 僕にはそれを止める権利なんてない。
「……ありがとうございました」
午前三時、春輝君が僕の家から飛び出した。
「本当、僕って最低……っ!」
 傷つけた。彼は僕のことを思ってくれていたのに。
 頬を叩いた右手が、じんじんと疼く。
――朝霧さんは時計嫌いなんですかっ!?
――じゃあ時計屋さんやればいいじゃないですか!
 春輝君の声が、脳内で反響する。
 その後、眠れない夜をどう過ごしたかは覚えていない。

*  *  *

 結局日曜日も何もせず、そのまま月曜日を迎えた。あれから、ずっと時計屋のことを考えていた。
 思い出すのは楽しかった記憶。あの頃に戻りたくないといえば嘘になるが、脱サラして時計屋になる勇気なんて僕にあるだろうか?
 色々なことを考えてはみるものの、何か答えが出るわけでもなく。サラリーマンの僕は会社へと向かった。
 平坦な机。平坦な画面。平坦な空間。
――時計のような、けれど時計とは明らかに違うこんな日々に、何の意味がある?
 自問しても、答えなんて出なかった。
 人知れずため息をつく。そのときだった。
 マナーモードにしている携帯が震えているのがわかった。メールだ。誰からだろう? 見てみると、そこには“春輝君”の文字。
 春輝君が……? 急いでメールを確認する。
『件名:ごめんなさい
 本文:朝霧さん、先日は本当にごめんなさい。
    でも俺、朝霧さんに時計屋さんを続けて欲しいって、心からそう思ってるんです。
    土曜日の夜、また朝霧さんの家に行ってもいいですか?』
 決して長くはないメール。それでも、僕の心は少し軽くなった気がした。
 春輝君と話せば、何か変わるかもしれない、なんて思ってしまったのだ。

*  *  *

 土曜日。あのメールに『こちらこそごめんなさい。是非来てください』といった返事をしたから、今日は春輝君がやってくるだろう。今までと変わらない訪問な筈なのに、今日ばかりはやけに緊張感を覚えた。
 ドキドキしながら待っていると、不意にインターフォンの音が聞こえた。ぱたぱたと急ぎ足で玄関に向かう。
「はーい」
「あの、先日は本当にごめんなさいっ!」
 扉を開けるなり、春輝君が頭を下げていて驚いた。
「とっ、取り敢えず中に入って……!」
 と促す。部屋に入っても、やはり彼は居心地が悪そうだ。
「本当にごめんなさい……」
 そんなに謝られた、こちらも困ってしまう。本当に謝らなければいけないのは僕の方なのに。
「俺、朝霧さんのこと何も考えてなくて……」
「ちょっと待って」
 流石にこれ以上謝られたらたまったもんじゃない。
「本当に謝らなきゃいけないのは僕の方だよ。春輝くんは僕のことを考えてくれていたのに……。挙句の果てにはひっぱたいちゃって。本当、申し訳なかったと思う。ごめんなさい」
 僕が謝ると、春輝君の顔は更に曇っていった。
「でも……」
 そう言って、黙り込んでしまう。
 この沈黙は何を意味しているのだろう? ただ、何となくこの沈黙を壊してはいけない気がして、ただ黙っていた。
 しばらくして、彼が重たい口を開く。
「俺っ……朝霧さんに時計屋さんをまたやって欲しいんです! 時計に関わってる朝霧さんは本当に楽しそうで……。けど、俺がここに帰ってきて初めて朝霧さんに会って、カフェで話したとき……。あのときの朝霧さんは、なんというか、俺の知ってる朝霧さんじゃなくて……。その時思ったんです。ああ。俺は時計と一緒にいる朝霧さんが好きなんだなあ、この人と一緒に働きたいなあ、って」
「俺と、一緒に……?」
 驚いた。春輝君が俺と働きたいと思ってくれていたなんて。春輝君を見てみると、顔が真っ赤だ。どうやらそこまで言うつもりはなかったらしい。
「あっ……はいっ……朝霧さんと一緒に働くのが、僕の夢だったんです……! でっ、でも、迷惑とかは全然かけませんし……」
 真っ赤になって言う姿がなんだか可愛らしくて。
「そっか……ははっ」
 思わず笑いがこみ上げてくる。
 こんなにも楽しいのは、時計があったから春輝君がいてくれたから。春輝君と時計が僕を救ってくれた。だから、僕は。
「じゃあ、少しだけ考えてみるよ」
「本当ですかっ……!?」
 春輝君と働きたいと思った。
「その代わり、今までみたいに毎週来てくれる? 一緒に時計触りたい」
「もちろんですっ!」
 春輝君が大学を卒業したら、時計屋を再開しようかな、と思った。そのときまで、春輝君が時計を愛してくれて、僕と一緒に働きたいと言ってくれたなら。
 まあ、今の彼を見ていたら、そんなことは容易にこなしてしまうと思えるのだが。
――春輝君が卒業するまでに、僕が脱サラする勇気をつける方が大変かな。
 そんなことを思った。

近況報告?

2013年08月12日
もうちょっとホームページ更新してもいいのよということなので更新します。しかし小鳥さんは意味のない更新でもう飽きられてるのではないかと思っています。

ホームページ新規閲覧率みたいなやつが49%だったんですけど、これはリピーターも初めての人も増えてるという勝手な解釈でいいんでしょうかねー?

最近の文芸部の活動を紹介しようとおもうんですが、自分はなにも関わってないので間違ってたらごめんなさい。大きくわけて泉と俳句甲子園の活動が主ですね。
泉は昨日が〆切だったらしいけど、みんなだしてくれたんでしょうか?自分が唯一部室に作品提出しに行ったら、誰もいなくて涙目でした。あれ?今日〆切なんじゃねえのか?と思って部室のホワイトボードを眺めると第一次〆切日と書いてありました。可愛い後輩達に会うこともできず、虚しく長崎土産のセンベエらしきものをポリポリしてました。
俳句甲子園は凄いらしいですよ!毎日先代の部員様や3年生を呼んでの質疑応答練習をしています!参加率は不明なんですけど。地区大会のときも最後は質疑応答練習だったので、練習もついに最終局面へ!って感じなんでしょう!今年はいいとこまでいってくれるのでは?と期待しています。自分も練習参加したいけど、時間がね…。

こんなところでしょうか。喋りたがりの人に広報活動はあまり向いてない気がします。今日の話も正確なところとは断定できませんしね。
Twitterのフォロワー100人突破したら何かしたい…が恐らく1人でなにかすることになりますが…何も思い付かないですね。

総文祭報告

2013年08月10日
画像

 三年生、開来山人です。やや遅くなってしまいましたが総文祭の報告を書きたいと思います。面倒くさがりなので、大雑把な報告になると思います。

「第37回全国高等学校総合文化祭長崎大会文芸部門」(俳句)
とき:8月2日~4日(前泊後泊したので5日間滞在)
ところ:長崎県立大学シーボルト校

 一日目、文学散歩。原爆資料館、平和公園、歴史文化博物館、県立図書館、諏訪神社。街を一日中廻って感じたのは、長崎の歴史は何だって含んでいるな、ということでした。鎖国外交、蘭学、キリスト教迫害、明治維新、原爆……一日で廻れる街の中に、これだけの歴史が詰まっているのは、北海道・旭川の自分には驚きでした。坂が多いとか、暑いとか、それだけではない風土の差異があるのだな、と感じました。

 二日目。分科会です。ご当地俳句、俳句ビンゴといった交流の後、吟行句、総文祭出品句を講師の野中亮介先生(馬醉木)に批評していただきました。当日句のみならず、出品された全句(37人×3句)の丁寧な講評をいただけるとは思っておらず、感激でした。終りにはミニ俳句講座もしていただきました。

以下、いくつか先生のコメントをメモ。
○俳句というのは常に弱者の方に立つ。
○季語はコード。知識として働く。(夕顔と言えば、源氏物語を思い出す)
○「帰り道」が多い。流行ってるのかな。工夫を。
(下五「帰り道」の句が多くあったことから)
○固有名詞はきかせなきゃ。注意して、仕掛けになるように。

 またこの日の夜、一部の生徒によるホテル句会に参加。沖縄のRさん、O君、仙台のNさん、福井のK君。
 俳句レベルの高い他校勢と直接かかわって、僕は打ちのめされました。こりゃかなわん。俳句甲子園では、こういうところと戦わなきゃならぬのか。……という感じで。旭東の俳句の足りない部分が見えたような気がします。例えばとっさの鑑賞。句会での愛溢れる、作者以上の鑑賞に触れると、旭東のコメント力の無さを確信します。俳句甲子園までにわが部の俳句力アップを図らねば、勝てない、と思い、帰ったら色々練習を工夫しようと決めました。

 総文祭としては以上のようなところです。すぐ上に書いた通り、総括すると「打ちひしがれた」です。へなちょこ文化部が「打ちひしがれた」体験をするなんて稀。引退までのこりわずかですが、部の俳句活動の質の向上を図って、いくつかアクションを起こしたいです。引退の日のブログにその成果を書けたら嬉しい……。

 最後に、長崎でつくった俳句を。

坂登り終へ夕焼に造船所 
     
八月のひとり歩きの速さかな     

逝く夏や手摺に薬指触るる      

風琴の音あり葛の茂りけり       

かの街の泉に像のあると言ふ     

てんと虫にはかに空へ戻りけり    

風死せる階段登りきつてシェー     

写真師と長い散歩や雲の峰     

話し終へ噴水急に高くなる           

天井の鎖やや揺れ劫暑かな  

どの書にも乱れありけり晩夏光               

繙けば晩夏となりぬドゥフ・ハルマ        

源内も子平もゐるよ夏休

エレキテル廻す晩夏の中にをる          

青蔦や出島を示す渾天儀           

先端に十字の塔や朱夏の旅                

どうも、こんばんは。管理人の空集合です。

着々とホームページの来場者様が増えてくださって…嬉しい限りです。本当にありがとうございます。


さて、先ほどは度重なるブログの連投、申し訳ありませんでした。
Twitter連携は切って更新を行っていましたが、「どうして句会録がブログに?」と不思議に思われた方がいらっしゃったら申し訳ありません。

今回、句会録をブログに投稿する形に戻させて頂きました。

前回の「句会録について」の記事で触れました、
・普通のブログの記事に埋もれてしまう
・句会録は『作品』という形で掲載すべき
という二点に関しては、今まで通り作品にリンクを掲載し、いつでもご閲覧できる形にすることで対応致しました。



さて、ここまで少し堅い感じになってしまいましたが……。

ここで、このような形をとった経緯を愚痴らせて説明させて頂きます。

まあ、単にページ容量が足りなくなっただけなんですけどね……。
このページを作っときは「まあどうせ文章しか更新しないしそんな容量くわないから大丈夫だよね!」なんて思ってたわけなのですが。
あまり大きな声じゃ言えないんですけど思いの外容量少なかったんですよ……こんなに少ないとは思いませんでしたよ……もう……

プレミアム会員なんて素敵な機能もあるのですが、無論そんなものにお金が出るわけも無く……。
色々考えた結果このような形に落ち着きました。

今後、句会録以外の作品を従来の形で掲載するか句会録のように「ブログに投稿⇒『作品』ページにリンクを貼る」という形にするかは部員と話し合って決めてゆきたいと思います。



まだまだ暗中模索な感じの文芸部HPですが、これからも見守って頂ければ幸いです。

暑い日が続く中、松山俳句甲子園に出場するメンバーの俳句力UPのために吟行を行いました。
場所は旭山動物園。参加した部員は6人。
句会の結果をご紹介します。
(兼題「キリン」で一句、兼題なしで一句。投句は6人、選句は5人。選は一人三句)


背のびしてキリンに近づく夏帽子(ありあ)/二点句
選:小川朱棕、雨宮寧々子

片陰に死んだひよこを横たえて(小川朱棕)/二点句
選:ありあ、雨宮寧々子

風死せりキリンを青く塗ってみる(雨宮寧々子) /二点句
選:ありあ、開来山人

桜散り生まれてきたりフラミンゴ(雨宮寧々子)/二点句
選:ありあ、小川朱棕

フラミンゴ眠れ夕立過ぐるまで(開来山人)/二点句
選:小川朱棕、雨宮寧々子

炎昼のアザラシ肌は金と銀(茂木マックス)/一点句
選:開来山人

葉桜や動物園で待ち合わせ(ありあ)/一点句
選:開来山人

香水の風きりんは動かざる(小川朱棕)/一点句
選:茂木マックス

狼に食べられたいな炎天下(むみゃ~)/一点句
選:茂木マックス

八月やキリンは堪へるやうに立つ(開来山人)/一点句
選:茂木マックス

夏服のむかうキリンはぶちぶちで(茂木マックス)/無点句


新緑をもちゃもちゃしてるキリンかな(むみゃ~)/無点句

『第二回メール句会(七月十九日実施)』
 第一回に引き続き、旭東文芸部の俳句パワーの向上を目的として行った「部内メール句会」。第一回に比べて参加人数も増え、より活発な句会となりました。(兼題なしで二句まで・選は一人三句)




三日月や恋に破れしバーテンダー(想真唯愛)/三点句
・バーテンダーってかっこいいイメージあるので、かっこわるいバーテンダーを詠みたかったんです。そしたら失恋になりました(笑)(詠者より)
・バーテンダーって突飛。/開来山人
・バーテンダーが恋に破れたのが面白いです。普通は振られてバーテンダーに慰めてもらうイメージなので。/里久
・お洒落な感じがします。三日月とバーテンダーが合ってると思いました/雨宮寧々子
・バーテンダーの心も欠けちゃってるんだね。バーテンダーって心とか読み取って気を使える感じなのに恋に破れるとかめっちゃおもしろいとおもいました。/小鳥
・三日月がその心の傷をえぐる。/小川朱棕
・バーテンダーにはなぐめてもらいたいです。そういうお話を読んだことがあったので笑/ありあ
・恋に破れたバーテンダーっていいですね…バーテンダー好きです。格好よくて。恋に破れて凹むバーテンダーもなんか可愛くていいです。好きです。/空集合

星涼し折り紙贈りたくなりぬ(ひねもす)/三点句
・東京にいる姉の誕生日によんでみました。なにをプレゼントしようか悩んでいたのですが、ふと窓の外を見たら星が綺麗で、あれを贈れたらなとおもったけれど無理なので、折り紙で星を折って贈りました。そこまで読みとってほしいということではもちろんないですし、星と折り紙よくわからないと思われるかもしれませんが、いちおう実景?で、ぽんとできてしまった句です。(詠者より)
・星涼しと折り紙の取り合わせが好きです。というか折り紙が好きです。/空集合
・星涼しの表現がいいなと思ったのと、個人的に七夕の夜が想像できて、素敵だなと思いました。/雪羅
・贈り物をしたいけど折り紙しか贈れないこどもが浮かびました。/想真唯愛
・星と折り紙って、いい。あ、どーも旭川東に下五を「たくなりぬ」で締める流れが生まれてしまった感じ。逃げか。考え過ぎか。「し」「ぬ」はともに切れ字で、これは併用してはならぬという考え方もあるそうだ。/開来山人
・たくなりぬ俳句ではないか。取り合わせはいいですよねぇ。贈りたくなったっていうところが誰に?とかどんな?とか気になる。/小鳥
・たくなりぬ俳句。/小川朱棕

ローファーの爪先ならべ初桜(ありあ)/三点句
・ローファー履いたことないので憧れます(詠者より)
・女子高生成り立ての感じが初々しい^^作者もきっとこの句のように可愛らしいに違いない(≧∇≦)/小川朱棕
・ローファーを履いてさあ行こうかなっていう感じがしました。その気持ちが初桜の初に合っていて素敵です。/里久
・わー、可愛い。こういう少し初々しい感じ、大好き。/空集合
・靴か!カジュアルな靴であるからこその理由知りたいな。/小鳥

五時間目おどろかせたまへ春の昼(むみゃ~)/三点句
・五時間目。教科は古典。寝たら怒られる。寝られないが,のどかな季節,昼ごはんの後の授業はキ…ツ……い……そこへ自分ではなく,他の人への起きろという声がした。びびって起きた,そんな句です。(詠者より)
・T先生www叱られてしまえっ(o^∀^o)/小川朱棕
・T先生が思い浮かびます/雨宮寧々子
・絶対1ー7(詠者のクラス)だと思います(笑)でもすごく共感できます。/想真唯愛
・言葉の面白さだけ。しかもスベってる。スベってなかったらよかった。あと五時間目=春の昼で言葉が無駄かな。/開来山人
・眠いから刺激を求める系高校生?5時間目ってなんていうか最も眠いといえば春ですね!昼はかぶっちゃってるね、残念。/小鳥
・古典の時間ですか?/ありあ

三日月を雲のかけらとおもひ込む(茂樹マックス)/二点句
・昼の空の白い三日月のことですね!大いに共感します。/小川朱棕
・「雲のかけら」という言葉が好きでした。/雪羅
・すげぇ景。詩人だ。いい。が、おもひ込む、が惜しい感じ。散文的になっている。「けり」とするだけで俳句的な部分は出ると思う。/開来山人
・なるほど。でも感動が伝わってこなかったです。例えは茂樹くんっぽいところが笑/小鳥
・雲のかけらとおもひ込むって、私には思いつかないなーと。いいなー。欠片って漢字のほうがよかった気もするけど、作者の好みの問題ですね…/空集合

朝虹に紙ひこうきの一機いる(里久)/二点句
・紙飛行機が飛んでいて、虹のアーチと似ているなという句です。(詠者より)
・某OGさんの句風だと思った。/開来山人
・朝攻めですかね。いいな早起き。景は明確だけど、何か句として不安定な感じが「に」と「の」や一機いるから感じました。他の言葉を探してみてほしいな。景は充分感動ものです!/小鳥
・なんか想真唯愛由実の『紙ヒコーキ』みたい♪/小川朱棕
・紙ひこうきと朝虹の取り合わせが個人的に好きです。/空集合

春きざす絹織のほどける如く(想真唯愛)/二点句
・歳時記の表紙の川っぽいのを見て絹織という言葉が思い付きました。寒い中でも少しずつあったかくなってきたなあという感じです!(詠者より)
・綺麗でやさしい。この絹織が紗だったらうれしい。比況にしなくてもよかったかも。/ひねもす
・寒くて凍えるような冬の雪がゆっくりと溶けていくイメージとかさなって、春の暖かさが感じられる句でした。/雪羅
・こう、ぱぁっと自然になめらかに春になる気がします。屈折しない垂直な感じが良さなのでしょう。例えとか俺には思い付かないからうらやま泣/小鳥
・『水温むリボン結びがほどけるやうに』って句があるからなあ……。/小川朱棕
・綺麗で好き。投句しようか迷いました。/空集合

雪女あばら屋今日も揺れてをり(雨宮寧々子)/二点句
・琴似工業(俳句甲子園地方大会の対戦校)のあばら屋に住んでいる人が印象的でした。あばら屋って言葉使いたかったのです(詠者より)
・妖怪俳句?例えではなく直接的に盛り込んだ所は評価したいです。あばら屋毎日揺れてたら家から逃げたくなるけど、貧乏だから怯えることしかできない心も外も寒い冬の出来事。季節感あって良いと思います。というわけで1票/小鳥
・雪女が揺らしているんでしょうかね?あばら屋と雪女が自分の中ではまりました。/里久
・雪女とあばら屋に関連があるのは感じられるが、視点が見えてこず、景がはっきりしない印象を受ける。/開来山人

夕虹や君の生まれた日だったね(ひねもす)/二点句
・綺麗なものを見ると、なにかいいことあるのかなとか、あったのかなとか思います(私は)。あ、君の誕生日だからかぁっていう句です。(詠者より)
君、は読むひとによってさまざまな間柄のひとに置き換わるのかなと思います。
・かわいいです。でも過去形なんですね、どきっ。/ありあ
・誕生日だとおもいますが誕生日といわないのがいいなとおもいました。/想真唯愛
・幸福感がいい。「や」の取り合わせにとびきりの口語「ね」を持ってくるのには違和を覚える。/開来山人
・そうなんです僕の生まれた日なんです。えっと日だったら1日全部を指すので何か違和感ありました。君って誰なのかな?恋人?/小鳥
・景がはっきりしないのがちょっと……。/小川朱棕

春めくや重力のなき溶き卵(ありあ)/二点句
・さいばしのカッカッって音いいなぁ、と思いました(詠者より)
・作者を知りつつ、選に入れてしまう。卵と春というのは明るい取り合わせ。重力のなき、はよくわからない/開来山人
・なぜかわからないけどデジャヴ。ゆるゆる。/ひねもす
・こーゆう俳句うちの部に人気な気がする。無重力空間みたいな動きだったのかな。春めけなかった小鳥くんは観賞能力鍛えないとだめかも。/小鳥

涼しさや宛先に沖縄と書く(開来山人)/二点句
・珍しく素直な句。沖縄の知人に郵便を出したときに浮んだ。(詠者より)
・"沖縄"が浮かんできました。もちろん筆ペンで書いたのでしょう。/ひねもす
・沖縄って書くなんてめったにない経験ですよね。うきうきします。/ありあ
・いっそ北極とか書いたら涼しさ通り越して清々しそう。そんなことは置いといて。開来山人じゃね?いや違ったらごめん。女の子とかに書いてそうだもん。/小鳥
・思ひよ届け(≧∇≦)頑張れ。でも主観が入りすぎててわからない人はわからない。/小川朱棕
・涼しいのに沖縄って言うのが不思議です/雨宮寧々子

山吹や折り癖つきし文庫本(むみゃ~)/二点句
・本好きーーーーーー!!何度も読んでいるうちに開くときの癖がついた文庫本。本の色は段々黄ばんでいく,が,これは黄ばんでいるのではないっ!!僕のその本への愛によって,まるで春に山吹が咲き乱れていくようになっただけだ!! (意訳)何度も読んで,黄ばんでいるのを山吹色にみたてました。(詠者より)
・モダンな感じというか雰囲気がとてもいいと思います。/雨宮寧々子
・どこか古めかしいような雰囲気があって好きでした。/空集合
・哀愁あるです。山吹は春だからその文庫本には違った意味がもたらされてるんだよね。と思った。それがわからなかったのです、すいません。/小鳥

蝦夷菊やあなたと同じペンを買ふ(空集合)/一点句
・「買う」って少し散文的かなーと思いつつ。けれど「買う」という動作に「あなたに少しでも近付ければ」みたいな気持ちが入ってるわけです。季語は迷いましたが結局蝦夷菊に。一般的にはアスターと呼ばれる花です。綺麗な花なので気になったら調べてみてください。(詠者より)
・蝦夷菊のかわいらしさが、ちょっと勇気のいる行為とつかずはなれずで合ってます/ありあ
・季語が動きそう。蝦夷菊なんてちょっと変わった季語とこの景は、ちぐはぐだと思った。/開来山人
・分岐する感じがペンを互いに買うのとかと合ってたとかでしょうかねぇ。/小鳥
・かわいい´`作者は女の子かな?/小川朱棕

日焼け子や少し麝香のにほひして(小川朱棕)/一点句
・焼けした少年は東南アジアか中近東の王子様を彷彿させる。そしてちょっぴりセクシー。顔が濃い人だけの話かもしれないけど。(詠者より)
・にほひして…どんな子なんだろう。でもそういう香りの子いるよね。日焼け子ってところの麝香とのずれがとても良いと思った。というわけで1票/小鳥
・麝香から匂いが出るのは当然なので、にほひと言わないでもいいかな、と思ったが、うーん迷う。麝香に香の字がある所為でもある。/開来山人

夕焼けやブランコの微かに揺れる(空集合)/無点句
そういえば夕焼けの句って作ったことないなーと思ったので。季語会でもやってたし(私出てないけど)作りたくなったんです。(詠者より)
・ブランコは季語ですからね…。季語だからダメ、逆に言えば、この言葉は、(夕焼なんかなくても)それ単体で俳句になるってことだと思います。/開来山人
・ぶらんこって季語なんですねぇ、自分も知らずに使いそうでした。微かであった方がいいんですかねぇ?/小鳥
・哀愁漂う句。少し大人しすぎるのが残念です。/小川朱棕

風死ぬる少しおそくの通学路(茂樹マックス)/無点句
・手元に詳しい歳時記がないが「風死す」で一つの慣用表現の筈。だから死ぬ、ではダメではないか(角川分冊歳時記に「風死ぬ」は載ってませんでした)。/開来山人
・風がないと考えて、寂しい感じが良いと思った。/小鳥
・学校行きたくない~´`って感じなのかな?/小川朱棕

朝焼けや今は何時と徹夜明け(里久)/無点句
・朝焼けは夕焼けと似ていて、どちらか解りにくいと思います。徹夜明けならなおさらです。(詠者より)
・朝と徹夜明けは近い。/開来山人
・あー俺もやるわぁそれ。時間がねえって焦っちゃう。でも上と下の句が被ってるから徹夜明け以外がいいとおもいます!/小鳥
・どちらかと言うと川柳?/小川朱棕

雪しまくされど逃げぬか電柱よ(小鳥)/無点句
・吹雪なんて誰もが屋内に逃げ込むのにそれでも立ち続ける電柱を詠んだ句。地吹雪やと悩んだ。地である必然性なくてやめたけど、そっちのほうがまとまって良かったかも。(詠者より)
・か、よ、でブツブツ切れていて幼い。/開来山人
・電柱が寂しく、だけど力強くただずむ景が目にうかびます。違う風でも合いそうですね/ありあ

「文化の日だからニュースを見ています。」(小鳥)/無点句
・祝日だから出掛けようと誘われたけどだるかったそんなときに一言。文化の日専用お断りフレーズ。NHKって入れれれば良かったのに思い付かなかったのでニュースに。(詠者より)
・作者が分からない。危うい句。気になる。四句選なら入れていたが、危うすぎて手放しでは良いと思えなかった。/開来山人
・あはは(^w^)/小川朱棕
・現代的な絵のタイトルにありそうです/雨宮寧々子
・少し笑った(笑)こういうのもいいね。/空集合

夏きざすバックフリップの向こうへと(雨宮寧々子)/無点句
・バク転ができるようになりたいです。きっとバク転できれいに着地出来たら違う世界が見えるんだろうなと思って作りました(詠者より)
・ぷ、ぷろれすわざ?だったらすげえ面白いんだけど。ネットで調べたけどどれかわからなかった泣/小鳥
・躍動感があります/ありあ

菓子のよな下着まとうや水の春(小川朱棕)/無点句
・最近の女の子の下着は可愛い!見ているだけでうきうきします^^(詠者より)
・季語が面白い。これをここに持ってくるとは。いい句。ただ、よな、はズルいな(笑)俳句は短いんだから!って言い訳はダメだと思います。/開来山人)
・菓子のよな下着ってなんだろう。チョコレートとかみたいな甘い雰囲気な下着なのかも。でもたとえは好き。/小鳥
・砂糖菓子みたいなのが頭に浮かびました。ほかにもいろんなお菓子が想像できますよね/ありあ
・AKBの「さよならクロール」のPVを思い出しました(あれ下着じゃなくて水着だけど)。作者さんのイメージと違ったらごめんなさい。女の子の下着って可愛いのもいっぱいあるよね。/空集合

花石榴いい思ひ出で終はりけり(開来山人)/無点句
・半ば馬鹿馬鹿しい句はこういう句会にしか出せない。いや、大真面目ではあるんですが……。(詠者より)
・良かったねぇ良い思い出で終わって。これはいちおう失恋なのでしょうか?季語が読めなかった。申し訳ない/小鳥
・これこそ「軽い喪失感」/小川朱棕

『第三回メール句会』
・八月七日実施
・兼題無しで二句まで
・選は一人三句




春雨や金平糖のおまじない(ありあ)/三点句
・自分がばらまいた金平糖を好きな人が踏むと両思いになれるというおまじないがあるそうです。食べ物は大事にしたいです(詠者より)
・春雨と金平糖が素敵です。それに金平糖のおまじないってのが聞き慣れなくて惹かれました。/里久
・なんかおまじないってかわいいです。たべものシリーズかと思いました。金平糖がひらがなだったら(バランス悪いけど)よかったなあと思いました。/想真唯愛
・なんかキラキラしてて可愛い。こういう可愛いの好き。/空集合
・中七下五が印象的。こんぺいとうには夢がある。/ひねもす
・安野モヨコの世界を彷彿とさせる。/小川朱棕

話し終へ噴水急に高くなる(開来山人)/三点句
・長崎詠。平和公園で噴水を見た。水が欲しいと言いながら亡くなった人々のための噴水。解説者が話を終えたら、瞬間に噴水が高くなった。(詠者より)
・いいですね~良い話だといいですね~/ひねもす
・沈黙が伝わってきます。何を話そうか考えている二人?の様子とか、夏の野外とかがぱっと頭に浮かびます。/ありあ
・季語の使い方がとても上手だなと思いました。季語が言葉にできない感情の起伏とかも暗示しているのかなと鑑賞しました。/小川朱棕

春近し差出人のなき手紙(想真唯愛)/三点句
・誰がかいたかわからない手紙って、あけるときなんだかどきどきしませんか?(不審物を除く)(詠者より)
・差出人がない…一回は受け取ってみたいですね。春が近いウキウキな季節に未知なものと出会う感じがいいです/里久
・差出人のなき手紙。なんだかどきどきわくわくしますね。ただ「なき」は「無き」の方がいいかな……いや、これも好みの問題か……/空集合
・手紙の俳句好きです。ちょっとどきっ、というかそわそわ感が伝わります。/ありあ
・中七下五はありそうだが、季語がいきいきしていて、やさしい句だな、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・こんな小説のはじまりを書いたことがあります。/ひねもす

手でページ押さえて眠る花の雨(里久)/二点句
・雨の日は家で勉強や読書なんかを…しおりがなかったら手を使いますよね(詠者より)
・この季語をこの句に持ってくるのは洒落ているな、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・したことはないけどやってみたいです。多分一生しないけど(笑) 花の雨ってきれいです。/想真唯愛
・教科書でやったことあります。そのページだけ浮くようになって。花の雨という言葉がうつくしい。/ひねもす
・季語の使い方がうまいなーと。/空集合
・ページ→頁、押さえて→押さへて、がいいかなと思った。情景はとても好き。/小川朱棕

チョーク持つ右手の傷や夏深し(空集合)/二点句
・夏期講習、一番前の席を確保して授業を受けてたら某先生の右手に切り傷っぽいものを発見(まあただの気のせいかもしれないけど)。先生の手の傷が気になるのは私だけでしょうか。(詠者より)
・白くて側面がすべすべなチョークと右手の傷が素敵です。どんな傷ですかね。気になります/里久
・実景としては単なる浅い傷だろうが、この教師自身が、過去に何かの傷を持っているところまで想像が及ぶ。夏深しとは不思議な季語だ、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・想像がふくふく/ひねもす
・傷も深いってことですか?/想真唯愛

打水は黒真珠の粒ぽたぽたと(茂樹マックス)/二点句
・涼んでますねぇ。きらりきらり。/ひねもす
・「黒真珠なり」と表した方がよりよいかなということと、オノマトペは独自の感性で創作したものを使った方が良かったかなと、推敲の余地はありますが、雫の比喩に黒真珠を持ってきたところが何よりも素晴らしいです。作者の感性の良さが存分に発揮されてます。/小川朱棕
・黒真珠という表現を使った作者のセンスが素敵です。選を入れられなくて残念。/空集合
・粒っていらないかもしれません/ありあ

万緑や真っ白な看板の立つ(ありあ)/一点句
・これから何が描かれるんだろうというわくわく感。(詠者より)
・途方にくれてしまいそう。/ひねもす
・緑と白のコントラストが素敵。/空集合
・若々しい感じでいい。/小川朱棕

網戸ごし隣の家のギターの音(雨宮寧々子)/一点句
・実景です(詠者より)
・なんでもない日常なのだけれど、それが素敵でした。/空集合
・聞こえてくるものが平凡な気もするが、あるある、これ、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・ののの。アコギの音すきです。クラシックも。/ひねもす

黒南風やざくりとささる紅の色(雨宮寧々子)/一点句
・紅の色にはっとしたような感じです。(詠者より)
・暗く重たい世界に何か赤いものがあってそれが目に入った、そのビビッドさを「ざくりとささる」、しかも平仮名で表したのがすごいです。/小川朱棕
・なにがおきたのか。/ひねもす

告白の予行練習夏はじめ(想真唯愛)/一点句
・「告白予行練習」からすぐに出てきました←わかる人はわかるかもしれません。季語と近い気もしますが、真夏ほど熱い恋じゃないつもりです。(詠者より)
・告白の練習はやっぱり夏ですね。季語が動かない、ぴったりです。/ありあ
・花も恥じらう…本番はよ。/ひねもす
・素敵だったのだけれど、某曲のイメージが強すぎて……つい「まんまじゃない!」とか思っちゃいました。ごめんなさい(笑)/空集合

ドアからの溢れる光に夜食かな(里久)/無点句
・ドアの前に夜食って良いですよね。でも女性なら食べるか迷いますよね(詠者より)
・夜食らしすぎるかも知れない、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・イメージあります。おにぎりかしら。/ひねもす

花茣蓙や一番星を探しあふ(小川朱棕)/一点句
・テレビ俳句。カッコいい星空を眺めながらのキスの三位の演技より。(詠者より)
・誰と探してるのか気になります(*^^*) 星の名前を指定しないのがいいなあと思いました。/想真唯愛
・一番星は、一番星というなまえで呼べるからいいですよね。やってみたい。/ひねもす
・一番星って空にぽつんと一つあるイメージ。探し合うって、星がある景なのか、ないのか分からないです。/ありあ

紙風船親の投票終わらない(むみゃ~)/一点句
・小さい頃親が選挙にいくときについていったんですよ。で,帰るときに紙風船が貰えたんですよ。その紙風船が好きで早く終わらないかなぁ~って待っている句です。早く~ってときに限って時間が長く感じられるあれはなんなんですかね~(詠者より)
懐かしいなぁ~
・どこかヘンテコな景だ、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・清き一票を。/ひねもす
・平和でほのぼのした感じがして。好きです。/空集合
・幸せな句。紙風船でなければいけない理由があまり見えなかった。/小川朱棕

十二月イエスは神か人間か(小鳥)/無点句
・十二月はイエスが神であるか人間であるかによって全然過ごし方がちがいましたよね!昔はね…(詠者より)
・変な句だ。この時期に十二月を詠むのは離れすぎではないか、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・公会議…異端にされませんよう。/ひねもす
・神様だと思います(笑)十二月しか合うのはないと思うんですが、キリストといえば十二月なので、近いかなあと思ってしまいました。/想真唯愛
・十二月とイエスが近い気がしなくもない。けど、そうでもないのかしら。/空集合
・沈黙。/小川朱棕

青き日の浮気騒動春の闇(小鳥)/無点句
・春の闇は懐かしむらしいので。動詞はいれない方が良いかなと思って(詠者より)
・実体験だろうか、と私は長崎でそう思った。/開来山人
・あらまぁ。/ひねもす

どの書にも乱れありけり晩夏光(開来山人)/無点句
・長崎詠。歴史博物館に、隠元和尚の書があった。他にも長崎の歴史は何だって含んでいる。(詠者より)
・どんな創作にも精神状態現れますよね。/ひねもす

カチューシャは天球図柄衣更ふ/無点句(小川朱棕)
・今流行の太めのカチューシャ。天球図柄はかっこいい!飛んでいけそうな気がする!(詠者より)
・天球図柄、で一つの言葉だろうか。舌足らずな印象を、私は長崎で受けた。/開来山人
・素敵なカチューシャ。/ひねもす

夏の宵不揃いの爪眺めけり(空集合)/無点句
・爪を噛む癖ってのは嫌なものですね。(詠者より)
・気だるそう。切らなくちゃ。/ひねもす

ぷかぷかと水面の上の月にいる(むみゃ~)/無点句
・夏目友人帳から作りました。気になった人は夏目友人帳の一期(多分……違ったら二期)十一話『アサギの琴』を見てください句の景としては,アニメとは少し違うんですが,船の上で水面に映る月をみているという景です。(詠者より)
・かわいい。落っこちたら酒仙。落っこちてないからいい。/ひねもす
・何が月にいるのか気になります。/想真唯愛
・作者が創作した擬態語を使ってほしい。そして「水面の上の月」より「水面の月の上」の方がいいかもしれない。/小川朱棕

ガラス戸にセミ大のハエ鳴かず飛ばず(茂樹マックス)/無点句
・やだ…!それならセミのほうがいい…。/ひねもす
・よく味わえば味わうほど、斬新さと面白さに気付く。選句できなくて残念。/小川朱棕

『第一回メール句会(六月十九日実施)』
 旭東文芸部の俳句パワーを向上させたい、まずは部員たちの作句量を増やさねば、そのためには句会を増やそう、けれど全員のスケジュールを調整するのは骨が折れる……じゃあメールで句会をしよう。三年生がそんなふうに考えて「部内メール句会」が生まれました。投句・選句・批評まですべてをメール上で行います。第一回の結果をご紹介します。(兼題なしで二句まで・選は一人二句)




傷ついたぶんだけ洗ふトマトかな(開来山人)/四点句
・日常的な「トマトを洗う」ことにも感動はある(詠者より)
・どんな風に洗っているのでしょうか。ごしごし洗ってたらトマトも傷ついちゃいますよ。
・赤くてハリがあって元気な感じがするけれど、やわらかくていたみやすいトマトだから良い句だとおもいました。若いですね。
・トマトは赤くて、丸くて、可愛くて、太陽みたいで…それを傷ついた時に洗っているのが良いと思いました。それに怪我とかしたら、傷口を水で洗うので合っていると思いました。
・トマトがこの句で起こす作用を作者にききたい。

手花火やいつもは見えぬ地を照らす(ありあ)/四点句
・いつもは地面など見て歩かないけれど、花火に照らされた地面を見て新しい発見をした、という句です(詠者より)
・いつもは見えない地というのは普段から日が当たらないということ?
・場面が想像できて、素敵だと思いました。
・手持ち花火は打ち上げ花火と違って視点が下に向きますからね~!!面白いです。
・気持ちはわかります。でもふつうに考えたら、やっぱり地はいつも見えてるかなとおもいます。
・花火の、びっくりするくらいの明るさ。目に浮かぶ。
・地面って夜は見えないけど昼は見えてるのでなんとなくひっかかりました。

秋高し空飛ぶ自転車語る祖父(ありあ)/四点句
・実体験の句です。朝のニュースでやってたんだーと祖父が嬉しそうに話していたので句にしてみました(詠者より)
・空飛ぶ自転車というのがいいです。祖父という言葉ともあっていて言葉がいい感じの句ですね。
・はじめ、秋高しと空飛ぶ自転車が近いかなーと思ったのですが、そんなことないですね!
・「語る」の高揚感と「空」の語が、季語と近いかも、とは思いつつ、「空飛ぶ自転車」の面白さに惹かれた。祖父なのがいいよね。
・おじいちゃんが小さい頃夢見ていたことを孫に語る光景がすぐに浮かびました。
・E.T.を思い出してしまいました……(笑)
・空飛ぶ自転車っていいね。祖父を持ってくるのも可愛い。

廃屋の屋根の赤さや秋の暮れ(空集合)/三点句
・廃れた家の屋根が赤い、ってなんとなく寂しい感じがするじゃないですか。それに秋の暮れっていう寂しい季語を取り合わせてみました(詠者より)
・句全体として物悲しさが漂っていて景もわかりやすくていいと思いました。
・廃屋と秋、赤さと秋が合ってて好きです。
・小学校の音楽の教科書に載ってた「赤い屋根の家」という歌を思い出しました。
・センチメンタル。赤さ、と、秋の暮れ、が私のイメージとしては被っていて、結構な赤になってしまいました。
・廃屋って持ってこられちゃ、たまんない。廃屋ってフンイキある。言葉自体にフンイキある。

吃音の金髪女優ふゆさうび(小川朱棕)/二点句
・困難を乗り越えた(むしろ、自分をかがやかす材料にした)ものこそが美しいんだな、と(詠者より)
・吃音の金髪女優っていう響きがすごく好き。
・すげえ取り合わせ方。いいな。「ふゆさうび」の感じがでている。植物季語の取り合わせって、この「感じ」が大事だと思う。
・女優が吃音…役柄? 私の想像力不足ですみません。冬薔薇は使ってみたいなとおもいました。

峰雲と同じペースで旅をする(ひねもす)/二点句
・青い空、白い雲、どっか行きたいなぁ。とゆうかんじです(詠者より)
・雲と同じペース! 夏らしさがすごく感じられます。
・ゆるゆる感が峰雲と合っていると思います。
・のんびりした感じが好き。これも選ぼうかどうしようか迷いました。
・散文的なように思いました。

繋ぐ手の小ささ紅葉美しき(想真唯愛)/一点句
・紅葉狩りに行った親子の句です。繋いだ子供の手が小さくて、まるで紅葉みたいだなと感じている親の心情を詠みました。(詠者より)
・小さな手が紅葉に見えたのかなぁ~。
・かわいくてすきです。だから、美しき、にひっかかりを感じました。
・美しきって連体なのがいいよね。あと、ふつう美しいって言うと感情の露出になるけど、紅葉となると、なんか「美しき」って言っても許される感じがする。いやダメなんだろうけど、違和を感じない。
・可愛い。けどやっぱり「美しき」ってひっかかるなぁ……って感じが否めない、かも。もっと推敲したらいい句になりそう。

青蛙田圃に生えする産毛かな(雨宮寧々子)/一点句
・車の中から見た田んぼが産毛が生えているみたいでいいなと思い作りました(詠者より)
・蛙は苦手だけどこの句は好きです。私は、田んぼに生えている稲とかの小さい青い時のところに、蛙がいて、それが産毛みたいだったという風に解釈しました。もう、例え方が素敵でした。
・不思議。
・鷹栖のほうで見られそう……。
・田圃の産毛ってセンスがいい感じ。ただ生えする、の語がなーんか違和感。こういう表現あったっけ。生ゆる、でいいような気もする。
・産毛って言葉を選ぶセンスがいいなーと。

はつなつやアドレス帳に君のをり(空集合)/一点句
・夏の初めと恋の始まり? みたいなものを意識してみました。三割くらい実景です(詠者より)
・うきうきしてる……! 入れたくなりました(笑)
・はつなつの必然性が少し分かりにくかったです。
・わかる。アドレス眺めて「あーこの数字は誕生日かなー」とか考えるんだ。

くちづけの練習缶のソーダ水(小川朱棕)/無点句
・思春期だなぁ、と感じてくれればありがたいです(詠者より)
・かわいいなぁと思いました。缶だとソーダ水のかんじが見えないかなとも思ってしまいました。
・くちづけの練習って初々しい感じが好き。かわいい。

花楓かなしい恋をしたら駄目(開来山人)/無点句
・季語に最後まで悩む(詠者より)
・中七下五は活を入れている言葉なのでしょうか。花楓ととても合っていると思います。
・かなしいから、駄目、なんだとおもいます。でも、駄目、はかなしいです……(笑)
・かなしい恋をしたら駄目、けどしちゃうのが恋なんですね、なんて。

春の闇星の光るや帰路につく(想真唯愛)/無点句
・春の一人ぼっちの真っ暗の帰り道でも、空には星がたくさん光っていて、私は一人じゃないんだなあっていう句です(詠者より)
・闇と星は近いかな?
・やわらかい雰囲気はすきです。少し要素が多いかなとおもいました。
・景、響きは好きなんだけど、「闇」「星」「光る」が近いかなーなんて思いました。

友人の てるてる坊主 梅の雨 (むみゃ~)/無点句
・この句は梅雨になって、毎日雨が続き、雨が止むように、てるてる坊主に毎日、それこそ友人に会うような頻度で「雨やめ~、雨やめ~」と、お願いしている句です(詠者より)
・言葉が近い! どんなてるてる坊主かを描写したらより良くなると思います。
・冷笑的なのかしらとおもったらひどすぎますよね……ごめんなさい(笑)
・俳句、スペースあけない方がいいよ。どこで切れるかまで読者に任せるのが俳句。
・なぜ友人のだったのでしょうか.……気になります。

夏霞山から落ちて川とゆく(里久)/無点句
・山の上に雲がかかっていて、それが滝のように川へ落ちる景色を見て、うわあ綺麗と自分の好きな感じにまとめました(詠者より)
・涼しい感じの句ですね。
・すきだったんですが、~から~して~というのが少し気になりました。
・霞も山も川も大きな対象なので、絞ったらいいかな、と思った。けど、「山から落ちて川とゆく」の感じ、面白い。
・景は好きなんだけど……散文的というか、動詞が多いからちょっと違和感が……。

木綿豆腐を切りつけて小米雪(里久)/無点句
・木綿豆腐が好きなので俳句にしたかったです。小米雪はお米が好きなのと木綿豆腐ざらざらした感じが合ったので使いました(詠者より)
・切りつけて、がイメージしにくかったです。木綿豆腐、そんなに切りごたえないかなとおもってしまって……発想はすきです。
・豆腐っていう柔らかいものを切りつける、っていう表現が好き。

去る五月、新入部員歓迎の一環として、吟行を行いました。
場所は、中心街の近くながらも自然の多い常磐公園。
後日改めて開いた句会の結果をご紹介します。
尚、内容は以前投稿したものと同じです。ご了承ください。
(兼題なしで一句・選は一人三句)




鼻唄は下手こそよけれ春の風(六点句)
・春の風とかフワッってした感じがしてていいね。
・係り結びとか技巧を凝らしてていいね
・「こそよけれ」ってもう少し良い表現があったかも
・石川雅望の狂歌の本歌取り(詠者より)

春空やくるくる廻るペアカヌー(五点句)
・「廻る」じゃなくて「回る」でもよかったかもしれない
・ウ段の響きがいいね
・その場でくるくる回ってる感じがしてかわいい

残雪や泥吐きくれてのやつれよう(五点句)
・「吐きくれて」の「くれて」がわかりにくいかも→「泣き暮れる」といった、「ずっと同じことをやり続ける」って意味の「くれる」(詠者より)→「暮れる」って漢字を当てたほうがいいかも
・残雪は北海道では汚いイメージがあるので、景は思い浮かべやすい
・「泥を吐く」って表現がいい

チューリップも私もくちびる紅さして(四点句)
・句がかわいい
・「唇」じゃなくて「くちびる」だからやわらかい感じがする
・チューリップの咲き始めは先が色づき、それがくちびるに紅さしてるみたいだなーと思って(詠者より)

麗日や自転車に乗り姉を追う(四点句)
・「自転車に乗り」の「乗り」がいらないかも
・麗らかでほんわかした感じ
・乗れたての自転車で姉を追う可愛い妹の姿を詠みたかったんです……(詠者より)

愛娘風車持ちて駆け回る(三点句)
・くるくるした感じが良い
・公園に行けて嬉しいというのが読み取れて良い
・「持ちて」だとリズムが悪いから「持て」の方が良いかも

ないしょごとにするものかも朝ざくら(三点句)
・ちゃんと十七音になってるあたりすごい
・「ないしょごと」って平仮名なのがかわいらしい
・景がわかりにくいかも

春愁や「空が白い」と言ふ天使(二点句)
・「天使」というのが句の中で浮いてるかも
・「春愁」ってのは天使の心情なのかな? 少しわかりにくいかも
・公園の石像が天使だった。「空が白い」は曇り空で白くて、天使が愁いてるみたいだなーって(詠者より)

小岩にて歩き疲れて桜見る(一点句)
・「にて」が少し説明的かもしれない
・景は良いから、表現をもうそろそろ磨いたら良い句になる
・「にて」と「て」があって、音が少しうるさいかな……

チューリップ我咲き誇きほこれと手をあわせ(無点句)
・「我」と「手を合わせ」のギャップがちょっとあるかも
・「手を合わせ」がチューリップの形みたいだった、という発想がよい
・感性が良い、誰も点入れなかったのが勿体無い……

露にぬれ雲間に浮かぶキタコブシ(無点句)
・説明的
・要素が多く、感動の中心が動く
・季語が動くかも……

お知らせ!

2013年08月03日
こんにちは、想真唯愛です。
少し前の授業で「心のオアシス」について話したのですが、私が「…小説とか俳句とか?」とつぶやくと、周りの友達に冷たい目で見られてしまいました(笑)やっと夏期講習も終わり、本格的な夏休みです(*゚▽゚*)
さて、話が脇道に逸れる前に(もう逸れていますが)本題に移ります。
私たち文芸部は、来る八月二十五日に旭川買物公園で行われる夏フェスにて、部誌を配布します!
それにあたり、新たな部誌「泉」を創刊しました! みんな俳句甲子園や勉強で忙しい中創作をしています(^-^)
日程が合えばぜひ足を運んでくださいね!