春天や神話崩壊せし報せ
卒業はすぐにひとりにしてくれない
春風に夢やぶれたる剣士かな
花の絵は血のやうな赤貝殻忌
春愁や答案用紙に詩を書いて
吹くことの意味を思へり石鹸玉
里燕黒い山には鬼がいる
妖精の靴となるべしブルーベル
少年...
2014/04/26
世界みなアラベスクなり春春春
亜麻色の髪の心地や風光る
春の夢パジャマの釦はずれをり
廃校やなほ一面に芝桜
初夏の服はギャザーをたっぷりと
地球儀の割れてあぢさゐとなりぬ
虹立ちて人魚の絶命したる場面
ゼリーるるるどうしよう良くんが...
2013/11/28
ケーキ屋の屋根に小鳥の止まりたる
コスモスを妹の髪飾りとす
オパールのブローチ贈る秋深し
泣きじゃくる幼子の手に桐一葉
木の実踏む白き仮面の道化かな
黄昏の空を飛びゆく秋の蝶
秋麗看板直す人の影
霜降の枕の下に聖書あり
金木犀切れ...
2013/10/27
打水を終へ写真屋に向かひけり
花柚子や海の出てくる紙芝居
夏の風邪ガラスに匂ひあるらしき
第一幕キャベツ抱ふる人の立つ
涼しさや宛先に沖縄と書く
夕立の奥のからくり時計かな
薄墨に触るれば真水明易し
髪洗ひ夢は戦士と思ひけり
ラ...
2013/08/16
初夏のいへ紙のにほひに充たさるる
網戸越し四人でゴレンジャーごつこ
表紙だけ旧字の本や仏桑華
抽斗の底に指あと明易し
枕あつめて水無月の戸を閉めよ
峰雲や短く切れた紙テープ
手品師の取り出す紙と団扇かな
夕焼や俳優...
2013/08/15
夏の日やみな前髪を切ってきて
伸びきった肢体に受ける青嵐
十七歳のスカート軽し罌粟の花
夕立に呼ばれて我は生まれけり
ちょっとだけあの人が好き青岬
「おべんきょ」は好きじゃないのよダリア咲く
静脈をなぞつてゐたり熱帯夜
夏草やいつそ...
2013/08/15
蛇穴を出づ装苑の新刊号
木蓮やレターセットを選びをり
遠足や初恋の実らざりけり
不定詞は未来のニュアンス夏はじめ
黒水着皆折れさうな肢体もつ
難聴の耳にも夏の海の音
白靴やきれいに脚の伸びてをり
蓮池は人を喰つたやうに静か
秋鏡狂...
2013/08/15
血餅を磨きおとして水澄めり
雨の日の熱田神宮秋の蝶
朧月「好きって逆から言ってみて」
冬来たる甘えるように話す人
網窓と猫とシイツと血のにほひ
蛇穴を出づ吾が身は成り成りて
真っ白な夢をみている熱帯夜
春疾風髪飾りなどいらぬ髪
過...
2013/08/15
絵に描いた星が好きなのアマリリス
妹の夏服何かをはらみをり
夏蝶や仮面舞踏会の支度
浜木綿や開花を待てる息の音
緑陰や女生徒は妖精のごと
花茣蓙にのるは陶器のような足
蚯蚓這ふ否定の否定は肯定なり
数学の追追追試雲の峰
遠雷の鳴る...
2013/08/15
人波や襤褸市に先生の本
シャンプーのまへのしづけさ透谷忌
青蔦やおれの魅力を五十字で
冬山家こは嵐寛の付けし傷
ソロバンを手に鼻唄や春夕焼
夏帽に知らない人の記名かな
種選りのきみ断定の語調かな
いまはむかし図書室に春蚊の羽音
安...
2013/08/15
少年の古拙の微笑朝寝かな
たんぽぽやギリシャ神話のやうな空
梅雨晴や彼のエビフライが好き
裸子の細き瞳の潤みをり
後ろから抱かれてゐたり遅日かな
清明の陽や鉛筆はときんときん
冬銀河ノンアルコールカクテルは青
鉄琴のグリッサンド天の...
2013/08/15
縦笛で奏するロンド秋深し
湯豆腐のことを書きたる自伝かな
わつと言ふとき口は開く荷風の忌
水仙や役者の多き芝居小屋
君からの電話裸のままで取る
明月や顔真卿を臨書する
花冷の紙芝居屋の弔辞かな
朝月夜セイコーマートの中と外
狸棲む...
2013/08/15