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【鼎談】池原×柚紀(広島高)×瑞季(広島高)「この句、かっこいい!」

対談第2回。あ、3人だから鼎談ですね。なんと広島高校2年生の青本柚紀・瑞季さんに来ていただきました。池原がメールでお相手。青本シスターズは二人で一台の携帯電話を使用していらっしゃるそうで、若干会話がぎこちないのはそのためです。今年の反省から俳句鑑賞まで、盛りだくさんの中身、ご覧ください。



第16回俳句甲子園公式作品集を読む!(目次)へ

池原「こんにちは。今日はよろしくお願いします。まずは、今年の俳句甲子園に参加した感想をそれぞれどうだったかをききたいと思います^^」

瑞季&柚紀「よろしくお願いします」

瑞季「今年の俳句甲子園では、ディベート面の弱さを思い知りましたね。自分たちの句の魅力をアピールしきれなかった事が心残りです。試合に関しては後悔の方が多いですけど大会自体はすごく楽しかったです。やっぱりチームで俳句ができるのはいいですね。池原さん、堀下さん、そのほかにも、大会前から交流があった方と会えましたし。好きな俳人の先生にもお会いできて、もう大満足でした(笑)」

柚紀「ディベートの難しさを感じました。句の魅力は言わなくても漂うのが理想だと思うんです。言い過ぎず押し付けがましくならず。そのあたりで迷って言うべきことを言い切れなかったのは残念です。それからお二人をはじめ、去年知り合った人たちと直接合って話せたのが良かったです!他の人とのつながりで審査員の先生ともお話できたことこともあった。複数年出場することの意義や俳縁の大切さを感じました。何より楽しかったですね(笑)」

池原「ありがとうございます。わたしも二人に会って直接お話しできてとても充実した俳句甲子園でした。それでは本題にいきたいと思います!『この句、かっこいい!イケメン俳句!俳句だけで惚れられる!』。今年の俳句甲子園全国大会の作品の中で一番心臓撃ち抜かれたっ!と思ってしまった異性の作品をそれぞれ教えてください」

瑞季「一番を決めるのは難しいですね…<ポケットのどんぐり傷をつけ合へり 河田将英/開成A>ですかねー……」

柚紀「一番は難しい(笑) うーん、悩みますね……。<指そへて風鈴鳴らぬやうに吊る 辻本敬之/洛南A>でしょうか」

池原「瑞季さん、団栗の句の中でも一味違った個性のある句ですよね。具体的にはどういったところに魅力を感じましたか? 柚紀さんは繊細な感じの句を選びましたね。この繊細さに魅力があったのですか?感想を教えてください」

瑞季「団栗を繊細に読み込んだところです。ポケットの団栗を詠んだ句はありそうですが、団栗が傷をつけあう切なさというこの句にしかない持ち味があると思います。一目見て、この団栗の様子が、傷つけ傷つけられながら生きてゆく人間の姿と重なりました。こういったセンチメンタルなところに心臓を射抜かれましたね(笑)」

柚紀「風鈴を吊る時って、少し無理な姿勢になっちゃって、結構大変だと思うんです。繊細さもだけど、まずは風で鳴らせるのがよい。そう考えるというところが魅力的だと思いました」

池原「瑞季さんの選んだ句、確かにこの兼題は可愛らしいイメージが強いためか、どこかほっこりした感じの句が多い中で、このように少し寂しく仕上げた句は他にはなかったかもしれません。他の木の実ではこのセンチメンタルさは出せなかったのでしょうか?どう思いますか? また柚紀さん、風鈴の最初の音は風で鳴らせるために。そのためなのかと納得しました。言われるまでは気づきませんでした(笑)この句の良さを更に理解することができました。さすが柚紀さん!」

瑞季「団栗の形状を考えてみると、とがったところがあってしかもつるっとしているから傷が目立ちやすい。だから『傷をつけあう』という表現を納得させてくれるのは団栗しかないんじゃないでしょうか。そして団栗には純粋なイメージもある。純粋さが切なさをひきたてているところもあると思います」

柚紀「実は瑞季が挙げた河田さんの句と迷ってました。センチメンタルと繊細を天秤にかけていたらいつまで釣り合ってしまって(笑) 考えの素敵さに気づいてこれは素敵! と思ってこちらにしたんです」

池原「なるほど。確かにいい句たくさんあって迷いますよね(汗) 次は『景に惹かれた』句をそれぞれ教えてください」

瑞季「やっぱり迷いますね……<黙礼に風の生まれて蓮の花 丸本勝典/松山中央>でしょうか」

柚紀「これまた難しい(笑)候補がいくつかありますね。共感で選ぶと<地震(なゐ)の春指笛の音を届くまで 下岡和也/松山東A>でしょうか」

池原「瑞季さんの選んだ句、確かになんか荘厳な美を感じさせられます。ですが、蓮と風の取り合わせって非常に多かったように思うのですが、他の句とは違う良さがこの句にあったからなのでしょうか? 柚紀さんの選んだ句、NHKの俳句甲子園の特番で放送されていたように作者自身の思い入れがとても強い句。柚紀さんの心にも届いたんですね。放送されていた句とは微妙に違った(春の地震指笛の音の届くまで)のですが、二句を比較しての感想を教えてください」

瑞季「風は風でも、風の生まれて、と言ったところに惹かれました。蓮の生命力のあらわれのようだし、すがすがしくて。黙礼のおごそかな雰囲気から異質な爽やかな風の誕生につながってゆく雰囲気が好きです」

柚紀「春の地震だと地震そのもので、地震の春だと地震の起きたその春じゃないかと思います。前者だと指す空間・時間がやや狭くなります。事実ではあるのですが季感がどうかという話も出てくるのでは。また、地震の程度をまだ特定しかねます。
後者の場合は空間は現地のみではなく、時間も春全体に広がる。空間の方は作者が直接体験しているわけではない、ということもあるんじゃないかと思います。
被災地以外は春で、生命に満ちあふれつつあるのに、被災地では多くのものが失われたままだという状態が見えて春という季節が真実味を帯びています。
また、春の地震は純粋に言葉だけを取れば単に春にあった地震ということ。ですが、地震の春は地震が起きたそのときだけでなくずっとずっと長い間傷跡が残り続ける。そのことをも暗示している表現だと思うんです。句の主体が地震に取った行動、指笛を吹くことですが、その音が届いたところで何も変わらないかもしれないんです。私たちには現場で直接何かすることはできなかったし。でも、春の地震について何かしたくて、せねばならない気がして、いてもたってもいられない。自分の当時の思いにもそのようなものがあったように思います。
およそ二年半を経て、当事者でなかった当時の私たちの思いが克明に再現された句だという気がしました」

池原「お二人とも、深い鑑賞ありがとうございます。ではもうひとつ『じっくり時間をかけて鑑賞したら良さがわかった句』をそれぞれ一句教えてください」

瑞季「ひとつに絞ると<夏の海おほきな旗の揚がる音 堀下翔/旭川東A>ですね」

柚紀「じっくり時間をかけて、というのとはちょっと違うかもしれませんが、<夏の海椅子が足りないので泳ぐ 山岸純平/灘>は反芻するたびにじわじわ来た句です」

池原「瑞季さんの方のは、あら、まさかのうちの学校の句!わたしたちメンバーもとても気に入っていた句です。個人的にダイナミックで快活な印象があるのですが、瑞季さんはどう思いましたか? 柚紀さんの方も。この句も素敵ですよね。なんか……言葉では表現できないのですが。柚紀さん、説明できますか?」

瑞季「『おほきな旗の揚がる音』とだけさらりと言ってみせるところが憎いですよね(笑)一読して、ダイナミックさ、爽快感に溢れた気持ちのいい句だと思いました。で、何度か読み返して旗を揚げる動作の意味まで考えが及びました。学校でも一日の始めに旗を揚げたりするから、この旗も何かの始まりを告げる旗なんだろうなって。動作の気持ち良さだけでなく、作者がこれから始まるものに対して抱いている高揚感までも詠まれている。それでいて平明。このさりげなく詠んだ感じがすごく好きです」

柚紀「難しいですね(笑)わかりやすい所だと、この句は全く因果のない二つのことを『ので』で繋ぐことで、『泳ぐ』で飛躍するところだと思います。<愛されずして沖遠く泳ぐなり 藤田湘子>も連想で出てきたのですが、そのせいか、季語の力なのか、この人も沖遠く泳ぐつもりかなと思いました。ただ、その句とは違って泳ぎ始めたときはほんの少ししょげた感じや切なさがあって、それが夏の海を泳いでいく間に高揚感に変わって行きそうです。帰ってきたときには多分この人はあたたかく迎えられるんじゃないかな」

池原「瑞季さん、的確な鑑賞ありがとうございます。この句はまさにそういうイメージで作られたんです。それが伝わったのはチームメイトとして本当に嬉しいです。ちなみに、どんな旗が揚がってたらいいな~とかありますか? 柚紀さんの初めに少し寂しい感じがしたというところに同感です。なんかちょっとハブられた感があって。そしてやけになって泳いでるうちに気持ちよくなってしまった。夏の海という季語が存分に生かされていると思いました。あたたかく迎えられるって例えばどんな感じですか?」

瑞季「うーん、どんな旗がいいかといわれると完全に個人の好みになっちゃいますが……日の丸のようないろいろなところで使われている旗より、手作り感あふれるその場所オリジナルの旗がいいと思います。不格好だったとしても、海に来た喜びががより強くなるんじゃないでしょうか」

柚紀「あたたかくというか、労いとともにというか。『泳いで来たん!? お疲れ~』とか『泳いで来んくても椅子半分貸してあげたのに』とかいろいろ声を書けてもらって輪の中に入るんじゃないかと。あ、でも読んでいくうちにこの人は椅子が足りないだけじゃなくて輪の中に何か見たくない物を見て、輪に入らずに避けるために泳いだという読みもあるという気がしてきました。となると、迎えられ方もまた違ったものになるのかもしれません」

池原「お二人ともありがとうございました。対談をしたことでより深い鑑賞をしていろんな句の良さに気づくことができました。これで対談を終わります。これからもお互い俳句頑張りましょう! ありがとうございました」

瑞季&柚紀「こちらこそ! 対談楽しかったです(*´艸`) また機会があったらやらせてください(*´▽`)ノ」

2013.11.26~28 鼎談はメール上で行われた。 編集:池原



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