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俳句甲子園地方大会参戦記SIDE-A

 こんにちは、三年生の開来山人です。本日、俳句甲子園の北海道地方予選大会が催されました。エントリーしたのはわが旭川東高校(A・B)と札幌琴似工業高校の3チームです。僕はAチームのリーダーでした。という訳でここでは「参戦記SIDE-A」と銘打って、Aチームの立場からのルポを書きたいと思います。長くなりますが、よろしければご笑覧ください。

 会場は札幌・かでる2.7、審査委員は五十嵐秀彦先生、久保田哲子先生、内平あとり先生。午前10時半から午後2時までのスケジュールで、抽選の結果、1回戦「初夏」で早くも身内のBチームと対戦することになりました。お互いに緊張しきったまま着席し、気持ちを落ち着ける間もないままに試合が始まります。どこの高校でもそうでしょうが、いやー、身内とは戦いたくない。実力だって伯仲するし、見知った顔に「ここは○○なので問題ありません!」なんて説明されると、「おお、そうだな」と納得させられかねません。しかし、これは勝負。緊張で頭が回らないながらも冷静な指摘を心がけました。返答の途中で訳が分からなくなってフリーズしたり、指摘をうまく言語化できずに詰まったり(これは僕)と、危なっかしい部分は何度もありましたが、全体としては、Aチームらしい、「鑑賞力と知識と俳句愛」のディベートが出来たように思います。第1試合で、3句中最もメンバーに支持されていた句が敗れたのは予想外でしたが、残りの2試合は勝利を収めました。

 わが部ではAとBに分けるにあたって、Aを一軍、Bを二軍というふうにはしません。学年や実力を釣り合わせます。どちらが勝っても、次の世代に経験を伝えられるように、という顧問の考えです。ですから、いきなり身内対決になって、本当にヒヤヒヤしました。そして次は、さっきとは逆ベクトルのプレッシャー、実力未知の他校との対戦です。昨年度初出場だった琴似工業さんが、1年でどれくらいの技術を身に着けて来たのか……ドキドキ。2回戦は「目高」です。

 2回戦にもなると、エンジンが掛って、メンバーたちの楽しそうなこと楽しそうなこと。「よくぞ聞いてくれました!」「よくぞそういうふうに鑑賞してくれました!」の勢いで、自分たちの句をアピールし、また相手の句にもビシビシ発言しました。琴似工業さんの、時にユーモラスで時に想像もつかなかった指摘に「そう来たか!!」「なるほど!」と感じる余裕も生まれました。結果は3連勝。ここで早くもAチームの優勝が決定しました(後で知りましたが、Bのリーダーであり文芸部公式twitterの管理人の小鳥君が、速報で全国にお知らせしていたんですね)。

 琴似工業さんは、旭川東とは全く違うディベートでした。たとえばAチームのディベートが技術的な部分に重きを置くのに対し、あちらは感性的な部分を大切にしてらっしゃるようでした。それがいちばん如実に窺われたのは、試合中ではなく、試合後のコメントだったように思います。琴似工業の代表者さんは、コメントを求められ、旭川東Aの最後の句を指して「僕、この句、すごく好きです」と仰いました。うれしい! 俳句甲子園をやっていると、どうしても「相手の句を褒める」機会が与えられません。そんな中、試合後コメントという形で、こういうふうなことをしてくださって、吃驚しました。琴似工業さんの姿勢に、リーダーは感銘を受けたし、何より好きだと言ってもらった詠者・一年生のWさんは、とても嬉しかったようです。

 昼食をはさんで、最終試合、旭川東Bと琴似工業の対戦です。兼題は「網戸」。この兼題、むつかしかったです。Aチームも苦労しました……。オリジナリティで勝負することになるこの兼題……Bならば印象的な言葉を登場させたり、琴似工業さんならば地名を提示したり。結果は、1対2で琴似工業の勝利。Bチームも健闘しましたが、惜しくも届かず。季重なりを指摘しないなど技術的に足りない部分もあったと思いますが、メンバーの入院をはじめトラブルが多発した中、めっちゃ頑張ったと思います。お疲れさまでした。

 という訳で、北海道大会の優勝は、旭川東高校Aチームでした。北海道代表として、またBと琴似工業さんの俳句への思いも背負って、松山で暴れて来たいと思います。五十嵐先生にも「松山では存分に暴れてね」とのお言葉をいただきましたから。また個人賞には、Aチームのリーダー(つまり僕、開来山人……こういうときって本名出すべきでしょうが、うーん、作品集に収められたときに探してみてください)の句が選ばれました。「引越しの部屋に目高の残りたる」。文句なしで選ばれたとのことで、非常に嬉しく思います。「屈折した感じ・軽い喪失感」との講評もいただきました。ありがとうございました。

 大会終了後、琴似工業のある方が、駆け寄って1枚の紙を差し出してくれました。なんと、対戦相手なりに、旭川東のディベートについて、感想と考察をまとめたのだそうです。短時間で、しかもびっしり。個人的なものだそうですが、こんなに嬉しいことはありません。本選に向けた練習で、大切に検討させていただきます(いや~嬉しいな、こんなことって今まであったかしら)。

 Bの一年生には、試合後何度もこぼしていた「悔しい」の言葉を原動力に、明日からもっと本格的な俳句の勉強をしてほしいと思います。ディベート練習だけでなく、作るときから、準備が必要だと感じます。知り合いの高校生俳人が「各兼題に30句しか作れなかった」と言っていました。旭川東は候補句のノルマは3句。それも、AB問わず、実際には1句しか用意できなかった場合もあります。もっと根本的な俳句力を作ることが大事だと思います。

 Bのリーダー、小鳥君、お疲れさまでした。彼は三年生ですが、実は俳句を始めたのは今年の4月。小説専門だったのが、急に俳句に目覚め、短い間でめきめきと知識も得て、そしてBを引っ張った、まさしくリーダー! って人です。凄いよな……。

 Aチーム。勝つために、きっと3チーム中いちばん練習を重ねました。いろんな句を見て、実際に向き合えば、いいディベートができると信じて、まずは来る日も来る日も攻めの練習をしました。リーダーがいろんな句を集めました。昨年度の俳句甲子園、高校生中心に若い人間が集まった「青春句会」、佐藤文香選句欄「ハイクラブ」、神奈川大学俳句大賞、ウェブマガジン「スピカ」、大御所の句集からも持ってきました。改善点を指摘するだけが練習ではなく、こんな面白い句があるから見てよ! という意味も含ませました。だからAチームの柱の一つは鑑賞の豊かさなのです。きっと。また攻守を問わず三年生の空集合さんにサポートを頂き、直前には部長やOGの岡本さんにもお世話になりました。ありがとうございました。

 そしてリーダーは、何より、メンバーの俳句愛を大事にしたいと思うのです。俳句愛って、たとえば、御中虫さんの句を見て「なんだこれ!」と大爆笑すること。たとえば、池田澄子さんの句を攻めたあと、「けどやっぱ、わたしこれ好き」と言うこと。たとえば、メール句会の翌日、「あの句好きだったー」と練習そっちのけで話すこと。8月の本戦に向けて、いろんな練習をしていきますが、その根本に、こういう俳句愛を据えていきたいと思います。

 長々と失礼しました。8月の松山本戦、頑張ってきます。応援よろしくです。「参戦記SIDE-B」も続けて掲載される予定ですので、そちらもよろしくお願いします。



コメント
[4] 開来山人 | 2013/06/26 18:30
牙城さん。

ありがとうございます。
三十点ですか……うーんまだまだですね。
編み物の子はいつも吃驚するいい句を作ります。
Aチームの主戦力です。

俳句の根っこ、肝に銘じます。
[3] 島田牙城 | 2013/06/26 18:20
おめでとう。引っ越しの金魚はまぁ30点てとこ(^-^)だけれど、コメントにある編み物の臍の緒は面白いねぇ。
松山の八月は残暑ガンガンだと思いますが、俳句の根っこを掴まえてきてください。期待しています。
[2] 開来山人 | 2013/06/25 20:49
岡本さん。
お読みいただきありがとうございます。
はい、そういう訳でした(笑)

推し宣言、ありがとうございます!!
松山で大暴れしてまいりますので
応援よろしくお願いします。

そうそう、
岡本さんのブログの
<こいつら好きだ>のコーナーで取り上げられていた
「編み物を終える臍の緒切るやうに」
の作者も、わがAチームの子(二年生)です。
[1] 岡本雅哉 | 2013/06/25 16:02 URL
開来山人さん、Aチームのみなさん、本戦出場おめでとうございます。

開来山人さん、「ハイクラブ」のライチティーの句についてのツイート、こういう訳だったんですね(笑)!こうなると他人とは思えない。今日から僕は旭川東高校チームA推しです。

松山での決勝もがんばってください。
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