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北海道新聞社主催、第55回有島青少年文芸賞にて2年吉田圭佑の詩「O Contradictio」が最優秀賞を受賞しました。

また、11月28日の北海道新聞朝刊22面23面で特集されていますので、もし宜しければご覧になってください。


以下、受賞作です。
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O Contradictio


   Ⅰ 国家検閲済み

「地味と滋味」
表だけ見てはいけません
大切なのは中身です
渋い顔をせず取り込みましょう
各自判断で吐いても良いです
(改)それが如何に醜くても

「衝動と聖道」
ひたすらに我慢あるのみです
世の中は全て我慢と受諾
全てを受け止めたその時
人は聖人へと成り得るのです
(改)いくら修行を積んだとしても
女、酒には目を向けます
抗おうとも無駄でしょう
聖人である前に動物ですから

「則とノリ」
周りの軽率な風潮に
流されてはいけません
大河があってそこで初めて
別々の流れを作れるのです
(改)その遥か上に絶対的な
規則が有るのをお忘れなく

「芥とACTER」
人を選別してはいけません
無駄も誰かにとっては芸術であり
命もそれぞれ選択肢があり
可能性があり希望があります
(改)常に何かを生み出して
我々自身を豊かにしましょう
非生産的、無気力的なら
塵芥も同然なのですから

「後悔と航海」
数え切れない後悔をしましょう
果てしない航路を往くことで
新しい大陸を美しい山を
発見でき得るのです
(改)過ぎ去る事象一切に対して
思い巡らすのは無駄です
今の時代に海路を辿り
世界一周を目論むように

「紙価と詞華」
言葉は集合してこそです
集合し、目に入った時
白い背景と相まって
(改)言葉は常に紙を与えられ
その言葉が高次的な程
より高級な紙を得て
より一層に輝きます

「武闘と舞踏」
美しい舞には
それを支える肉体があります
そしてそれを動作させる
確固たる意志で成り立ちます
(改)高い跳躍は逞しい肢から
美と力とは比例です

「怒りと錨」
自己防衛の感情です
「怒りっぽい」は個性なのです
船も一度錨を下げないと
止まらないようなものですから
(改)それは貴方を束縛し
暗い彼方へと沈めます
暗さと無音と冷たさが
貴方の全身を錆びつかせます

「王と翁」
いつか猛威を振るった王も
皆に等しく優しい王も
いつかは白髪を携えて
次の王の礎となります
(改)歯と知力とを失います

「起源と期限」
我々のスタートを知ることで
今の地点を確認できます
我々のルーツを知ることで
そこから解決策が出る時も
(改)後ろを向きながら走ると
前への意識が疎かになり
やがては躓き
歩み遅れます

「鉄と哲」
鉄は錆びて心理は変わり
今までの「はい」が「いいえ」になり
また最初から築き上げる
その手間を惜しんではいけない
(改)真鍮のように永遠に輝き
切れ目はおろか曲げも出来ない
この完璧かつ美しい構造に
我々は生かされているのです

「自己と事故」
人と人とは
いつも事故を引き起こします
そうして衝突する事で
貴方はやっと過ちを感じます
(改)私たちと共に
頑張りましょう



   Ⅱ 遠くに吠えるうた

この頃 向いの家の犬が
真夜中によく 吠えている
空気が澄んだ この町は
犬のダミ声も よく通す

何が不服で 吠えているのか
それは 遥か西の
革靴の雑踏が
耳障りなのかしら
あの高慢で 帝国主義で
孤独を孕んだ あの靴音が

或いは 北の大氷塊が
落ちる音か
ぽっかり開いた天の穴から
じりじり焼かれ
断末魔を上げる
あの声が

いいや 東の大演説家に
違いない
全てを拒み 鉄壁を築き
摩天楼を築く指示を出す
あの雄弁が

それとも 南の風が
唸る音かも
幾重もの雲を従え
計算不能のルートを辿る
大気の螺旋が

兎にも角にも 家の向いの
ナチュラリストで 国際主義な
犬がよく 吠えている



   Ⅲ 夢見がちなcapriccio

松がある
火の粉を 降らし
自身を 焦がして
乱立する 松

月がある
太陽に 憧れ
大きくなって
鉄の心を 晒している
荒れ果てた 月

湖がある
住む魚を 息詰まらせ
微小な生物すら 溶かし尽くす
ひとりぼっちの 湖

骨がある
獣でもない 人でもない
所有者を持たず 尖っている
風に鳴る 骨

鳥がある
これから 山の連続を
飛び続ける 航路の上の
所在を持たぬ 鳥

虫がある
生まれ 唯まぐわうだけの
エチュードを 奏でる
跳躍する 虫

私がある
絶世とも言える
この舞台で
このまま静かに
終結していく 私を夢む
Ritardando
薄紅の拍動



   Ⅳ 因果交流電燈

●いたみ
アア、ア
デウス様 聞コエマセウカ
アナタ様ヲオ慕イシテオリマシタ
(耳鳴リガスル)

サウスレバモウ 苦シマズニ
“ぱらいそ”ヘ行ケルト
思イ上ガツテオリマシタ
(爪、剥ガレタ)

今、家モ、山モ、クロスモ、空モ、
アノ人懐ツコイ野良ノ猫モ
誓子モ、拓郎モ
焼カレタノデス 引キ裂カレタノデス
押シ潰サレ 揉ミシダカレ
紙切ノヤウニ 折ラレタノデス
(腹モパツクリ割レチマツタ)

コレハ“ぱらいそ”デセウカ
コレガ“御加護”デセウカ
アア、イ、痛イ 背ガメクレテイル
手、手モ痛アアア
喉ガジボンデグル
景色ノ白、白、白、白
アア、セメ、テ、オ答エ、ォ



●いつくしみ
にわをふらふら
あるいていたら
ぴかぴか ひかる
ばらがさいてた
がらすのばら
がらすのばらは
いちりんだけ
そのほかみんな
ふつうのばら
それを
ながめていたら
あめがふりだし
かぜもふきだし
いつのまにやら
あらしになった
がらすのばらに
ひびがはいって
はなびらひとつ
おちて われた
かぜにふかれて
またひとつ
しずくがおちて
またひとつ
みずのおもみで
またひとつ
かみなりのおとで
またひとつ
僕はこまった
こまって こまって
こまったあげく
そこらのばらを
ぜんぶ切って
がらすのばらを
野晒にした

そしてばらは
さしこむ ひかりに
たえきれなくて
さいごのはなびらを
おとしていった



   Ⅴ ときのうた

白い巨塔
果てなくそびえ
象眼に満ちる
回廊を行く

塔の中は
発条でまみれ
その一動作が
西日を受け光る

その金属音との間に
呻く声、泣く声
鉄の歪み出す音
火の咆哮

母を求める黄色い声が
そのまま
火の粉になったようで
火が消えたように
その子も居なくなったろう

祈りの声も
「十戒」よろしく
口裂けるほど
叫ぶように
もはや何の敬意も称さず

高温が、波打つように
耳を撫で、頬をノックする
その実体だけだ
感じが分からない

歩を進める
象眼は薄れ
熱も消えたが
不感な俺への疑問が
残った

塔の小窓から
白い気体が立ち込めている
雲海を抜けたことは
それと強い光で知った

その窓から
天使が腰を下ろしている
頭の輪は
交信するように
疲弊を必死に伝えている

矢尽き 弓折れ
背中の翼は もぎ取られ
光沢のある骨の尖りと
青白い血を晒している

「辞職してやる
人間八十億人より
俺の庭の
咲きかけのシラサギが
気がかりだ!」

そういって退職届を
持ち忘れたまま
憔悴の表情で
空に落ちていった

踵を返すと
強風が吹き
髪が逆立つ
外の空気は…
やはり匂わない

屋上は
もうそこらが剥げて
天に一番近い所だと
貼り紙が告げている(赤い字で)

集合墓地
大時鐘
無情な光線が
待ち受ける

日本の墓石から
十字架
粗末な石塔
黄金の棺
晒された首…

そこに一つ
無名の墓石
ひたすらに黒い
吸い込まれそうな
艶やかさが

瞬間
鐘の音が空を断つ
理解した
定刻の合図だ
復僕は
この塔を登る
確定事項であった