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【鑑賞文】最南端から愛をこめて(八重山商工/下地壮)

 お互いの部の句の鑑賞文を書き合う企画、第2弾です。今回は南の地から八重山商工高校の下地壮さんに私たちの北の俳句を鑑賞していただきました。



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〈旭川東の句の鑑賞・最南端から愛をこめて〉 八重山商工・下地壮

一雨の来さうな感じゼリー食ふ 堀下翔
感覚的に通じる所のある俳句でしたね。一雨来そうだと感じる、動物的直感。濁った雲が迫り、少し肌寒くなってくる。ゼリーを食べている最中の、何気ない発見。
一雨来るという何気ないことも、何かしらの行為があってこそ分かるものだと思います。ゼリー美味しいよなあ、何味のゼリーだろ。気温的には暑くもなく寒くもなくって感じがする。情景が身に迫るような句で、好みでしたね。

全身に静脈這うや夏の海 池原早衣子
静脈が這うって言い方に惚れ惚れしましたね。手首から段々と心臓へ向かっていく静脈の青さに対比して、しっかりと血は赤いですからね。夏の海の内面を眺めるような。自らという生命の内側を眺めるような、そんな句だと思いました。そして素潜り漁をしたくなりました。魚も私になるという生命の連鎖が頭から離れない。

団栗のラテン語のごとく転がりぬ 池原早衣子
団栗が転がる。しかもラテン語のごとく。最初の印象は「説明できない面白さ」でもそれだけじゃあない。
ここから長くなります。
元々は古代ローマ共和国の公用語として普及した言語ですね。
そして、西ローマ帝国滅亡後もローマ文化圏の古典文学を伝承する役割を果たしていたラテン語です。更に大躍進、キリスト教会を通してカトリック教会の公用語として今度はヨーロッパ各地に広まり祭祀宗教用語として使用されるようになり、中世には中世ラテン語として成長しました。ルネッサンスを迎えると自然科学、人文科学、哲学の知識階級の言語となり近世のヨーロッパまで学術用語として発展存続をし、現在はバチカンの公用語……。そしてまだ、各種学会や医学、工業技術等の各専門知識分野では世界共通の学名としてラテン語名をつけて公表する伝統もあり。
私が工業技術高校で、尚且つラテン語に興味が無かった場合「何となくで選んだ句」で終わりますよこれ。
本当はまだまだありますが割愛。
こういった様々な用途に転がっていくラテン語と、団栗の丸みを生かした転がり具合。そういった掛け合せがあるのかと推測しました。身近にある団栗と、日本ではとょっと縁のないラテン語の取り合わせが面白くて取らせていただきました。

星涼し原稿用紙に描く挿絵 木村杏香
内容に即した絵を描くって本当に大変だよね、と、実感の伴う句です。私は割と作業として絵を描くことが苦手だったりするのですが、多分作者自身はそんなことを思ってもいないのだと季語を通して感じられました。とても爽やかじゃないですか、星涼し。挿絵を描いている人が大まかにだけど想像できてしまう面白さがいいですよね。夜更かししない程度に頑張ってもらいたいものです。

夏菊を摘み取る指を眺めをり 矢崎雄也
摘み取っている人は、どういった心境で摘み取っているのだろう。摘み取る指が、なかなか意味深で面白い。ただ綺麗だったから摘み取ったのか、ひとつの有機物と理解して摘み取ったのか。はたまた夏菊に誰かを重ねているのか……。妄想が膨らんでいきますね。
更にそれを眺めるときたもんです。あくまでも摘み取っているのは自分ではない。心情描写はまったくされていないのにここまで感情が見えてくる、この句の奥行に惚れました。



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