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【対談】堀下×池原「最優秀句を読む」

全10回を予定する鑑賞対談、満を持しての第1回です。今回登場するのは3年生堀下と2年生池原。お楽しみください。



第16回俳句甲子園公式作品集を読む!(目次)へ

堀「それでは対談第1回、最優秀句・青本柚紀『夕焼や千年後には鳥の国』を読む、ということで話していきたいと思います。こんにちはー」

池「こんにちは」

堀「まずなによりびっくりしたのが、二年生に最優秀をとられちゃったこと。三年生の悔しさですね」

池「あ、そうなんですか。私はそういうこと考えてなかったので……」

堀「今年は誰がとるんだろう? 開成の○○君かなぁ、松山東の○○君かなぁ、なんていうふうに考えていたんだけども、柚紀さんだった。閉会式で受賞者が発表されて、バッと柚紀さんが駆けて行って。あぁ、今年は二年生がとったんだ、さすが青本だなぁと思いました」

池「そうですね、彼女がいろんなところで発表している句をよく見ますけど、普段から大人っぽい落ち着いた句を作ってて。この『夕焼』も本人らしい、あ、柚紀ちゃんがつくったんだなあっていう感じの句で、本人としても嬉しかったんじゃないかなぁって思います」

堀「青本シスターズの句は柚紀も瑞季も大人っぽいよね」

池「大人っぽい。私は三歳児みたい……(笑)」

堀「思い出話をすると、今年の俳句甲子園決勝の兼題が『紙』だって発表されたとき、自分なりに「紙」が入る句を思い出してみたら、一番最初に出てきたのが柚紀さんの『冴返る紙に表裏を与ふ文字』だった。これは、『里』誌に『ハイクラブ』っていう佐藤文香さんの選句欄があるんですが、そこに載った句です(2013年6月号)。この句を読んだときにすごく感動して、『紙』と聞いたときにもまっさきにこの句を思い出しました。そして俳句甲子園で最優秀句が柚紀さんになって、あぁ、やっぱりこの人はすごい、と本当に思いました」

池「俳句をやっていない友達にこの句を教えたところ、一番最初に見ただけで、あっ、っていう感動が来たと言っていました。でも一方で、なんだか、『ん……?』って疑問が残ってしまう句だとも。これはどういうことなんだろうな……ということらしいです」

堀「へええ」

池「なんていうか、高校生の作る句じゃないっていう人がわりと多かったんですよね。去年の俳句甲子園最優秀句、開成高校の佐藤雄志君の句『月眩しプールの底に触れてきて』
があるじゃないですか。これを見てある人は、若さに嫉妬しちゃうくらいすっごく瑞々しくて、高校生に戻りたいと大人に思わせる句だ、と言っていました。今年はちょっと落ち着きすぎていて、句の共感がしにくいかなって思います」

堀「それは確かに思ったところ。もちろん毎年最優秀句はめちゃくちゃ完成されているんだけど、今年は特に落ち着き払っていて、もう完全に大人の句だなぁ、と思います。大人すぎることに対して池原は疑問ですか」

池「いえ。本人の趣味や感性が普通の高校生の精神年齢の上を行っているときもあれば、下のときもある。だから『この句は高校生らしくないからだめ』っていう批評は変です。この句は本人の感性で作られた、本人らしさが一番出てる句なのでとても好きです!」

堀「本人の感性。作風とも言い換えられますね。柚紀さんは、小さなものをちまちまと詠むというより、大きなものを捉えて詠むっていう部分が強いんじゃないかなって思っています。ファンとして勝手に」

池「ダイナミックで、はっと気づかされる感じで、哲学的要素まで含まれているような俳句が多いですよね」

堀「たとえばこのあいだの『ハイクラブ』(『里』2013年10月号)に彼女が出していた句に『守宮這う人類以後に紙の本』というのがある。人類、千年後といった大きな切り取り、大きな把握ができるというのは、高校生ではすごいなと思いました。おれなんかはちまちましたものを詠むのが好きなので。誰だったか、審査員の先生が、『俳句にはまだ詠まれていないことがたくさんある。それを見つけたのが青本さんだ』ということを最優秀句の評でおっしゃっていたと思います。自分たちのような高校生が、俳句にまだ詠まれていないことを見つける場合は、『小さすぎてまだ誰も見つけていないこと』を探すのが一般的かと思うんだけど、逆に柚紀さんは『大きすぎてまだ誰も触れたことがなかった、触れられなかったこと』を詠んだ。なかなかできないよねぇ」

池「そうですね……。話は変わりますが、この句を見た時の私の勝手な想像なんですが、帰り道に作ったのかなぁっていう気がして(笑) 本人に確かめられないままなんです」

堀「今度聞いておいてください(笑) なんで池原は帰り道だと思ったの?」

池「私の体験なんですが、帰り道はカラスが多いので」

堀「多い(笑)」※夕方の旭川東高の近くにはカラスがたくさんいる。

池「カラスがうわぁーって飛んでいるのを見てたら、あぁ、千年後には鳥の国ってこういうことだなって私はここでやっと初めて分ったんですよ。だからきっと広島でも同じことが起こってるんだと」

堀「千年後じゃなくて今じゃないですか(笑)」

池「いや、でも、もうほんとうにすごくて。鳥の逆襲が! みたいな感じで、ヒッチコックのようなストーリーになってくるのではないかと」

堀「ヒッチコックね」

池「そうです、ヒッチコックです。だから広島でも同じようなことが起きているに違いないんだと勝手に思いました。間違ってたらごめんなさい(笑)」

堀「今ヒッチコックの話が出たけど、そう、ヒッチコックの映画『鳥』のような不気味さ。おれもヒッチコックをイメージして、単に鳥ばかりがたくさんいて、そこから受け取る印象は人それぞれだろうけど、とにかく、そういう情景があるんだ! っていう絵を見せられた気分だったんです。けれど、作品集の青本さんの句のページに載っている高柳克弘先生の評には「収束の目途が立たない福島原発の事故や経済の行き詰まり……日本に暮らす私たちには、もう未来などないのではないか。しかし、たとえ人間の命が滅びたとしても、鳥たちが生命をつないでくれるだろうと、悲観と同時に救いが伝わる作品」と、つまり、社会的なメッセージが含まれているんじゃないかという視点がありました。おれはここまで社会的なことは感じなくて、ただただいろんなイメージが喚起されるというのを狙った句なのかと思っていました。作者がここまで社会的なことを考えていたのかというところまでは分らないのですが、池原はどう?」

池「高柳先生がここまで壮大な鑑賞をしたことにびっくりしました。こういうふうな捉え方をしたんだなぁっていう感じでしたね」

堀「一昨年の最優秀句、神奈川県立厚木東高等学校の菅千華子さんの『未来もう来ているのかも蝸牛』という句は東日本大震災の年の句ですから、未来というのには、『震災の後の未来』が想定されていますよね。この句でも社会性が取り上げられている。俳句には社会性や思想が必要なんだ! っていうのを俳句甲子園側からせまられているように感じたんです」

池「かならずしもそうではないと思いますよ。去年の句も社会的なメッセージもなにも無いのだけれど、自分が気づいたこと、景の切り取りで人を感動させることができる。かならずしも俳句は社会的なメッセージを入れる必要はないと思う。私は別にそこにこだわる必要はないと思います」

堀「おれもそう思います。この句に関して言っても、原発なんかの社会的なものを考えないで、好きな光景を思い浮かべればいい」

池「そうですね」

堀「そういえば、この句が発表されたときのこと覚えてますか? 垂れ幕があって、一枚のペラ紙で隠されていたんですよね。でも実は、自分の席から『~の国』が透けて見えていました(笑)」

池「透けて『鳥の国』まで見えてましたよね!」

堀「おれには『~の国』までしか見えなくて、一体どんな句が来るんだろうって思ってました!」

池「私は最初『島の国』に見えましたよ。え、日本じゃん! って感じで。失礼なことを言いますけど(笑)」

堀「これはなんの国なんだ? おだやかじゃない句が来るんじゃないかと思ってすごくヒヤヒヤしてました。そこでパっとめくれたら、『夕焼や千年後には鳥の国』だった。あぁ、きれいな句だったぁ、と (笑)」

池「確かにきれいです。でも、夕焼ですからね。怖い感じもします。私的には鳥が肉をついばんでるのかなぁと(笑)」

堀「人がいるんですか!?」

池「最後の死んだ一人……」

堀「あっ、なるほど(笑)」

池「そして、最後の肉のひとかけらをついばんで鳥の国! みたいな(笑)」

堀「人体俳句の話はまた次回にしていただきたい (笑)」※今後の対談の予定に『人体にまつわる句』のテーマがある。

池「あっ、すみません(笑)」

堀「グロテスクです」

池「きれいな表現じゃないですか! 肉をついばむ! 鳥葬みたい」

堀「鳥葬。いいイメージ、かも……? では、最後の一人を鳥葬するということで(笑)」

池「私はそうだと思ったんですよね」

堀「人が滅んで三百年くらいたってるのかなぁと思ってました。七百年後に人は既に無しみたいな」

池「ふーむ。この調子で鳥が増えていくとなるのか……」

堀「人が滅んだのは鳥のせいですか?」

池「……人間のせいだと思います」

堀「でしょ? 鳥が殺したわけじゃないよね(笑)」

池「それでもいいですよ! 鳥たちが復讐して……人間をついばむっ(※ついばむジェスチャー)」

堀「人間をついばむっ(※池原の真似) そうですねぇ……もうちょっとこの句が発表された時の思い出でも話しましょう」

池「はい。青本さんお友達だったので、あっ、とってくれたぁ! って感じでした。よくやったぞ、柚ちゃん!」

堀「うんうん。よくやったぞ! って感じ。他には……そうそう、話が戻るけど、『鳥の国』が透けてたってのがありますね」

池「俳句甲子園はもうちょっと厚い紙で隠した方がいいと思います(笑) 作品集のアンケートに書こうと思います……楽しみ半減しちゃったな。だってもし旭川東が賞を取ったら、まさか自分の句? 自分の句じゃね? ってなるでしょ。だめじゃん!!」

堀「俳句甲子園には厚い紙を用意していただきたい(笑) 今年は印刷された紙での発表だったからさびしかったよね」

池「ですよね! 書いてほしかったですね」

堀「昨年度は愛媛県の三島高校の書道部さんが書いてくれたんですよね。三島高校さんは書道パフォーマンスで全国的に有名な高校なんです。三島高校さんがわざわざ受賞作品の句を書いてくださって、一種の書作品のようなかたちで並べて発表される。あれは圧巻でしたね」

池「そのコラボをもう一回してほしいですよね。また受賞した時の喜びも違いますし」

堀「三島高校さんと川之江高校さんは実際に書道パフォーマンスもしてくれました。今年の作品集には川之江高校さんの、去年を振り返って、みたいなインタビューも載ってて。これもおもしろくて、載せるんだったんなら今年も呼べばよかったのに! って思いましたよ。非常に残念でしたね。もちろん書くのが大変ということもあるし、書道甲子園かなんかで忙しかったのかもしれませんね。……時間もまだあるしもうちょっと句の話をしましょうか」

池「夕焼の季語は動きませんよね。では、鳥の国ではなかったらどうなるんでしょう。なぜ鳥を選んだのかっていうのをちょっと考えてみましょうか。たとえばなんでしょう。……花の国?」

堀「花の国……。ちょっといいんじゃないんですか(笑) いい句になちゃった。千年後には花の国(笑)」

池「花葬された、みたいな。人間の養分を吸い取って生き延びた」

堀「……きれいな句だったのになぁ。池原の手にかかるとすぐにグロテスクになる」

池「鳥の国はSFチックですよね」

堀「SFチックだけどこの句は恐竜とかじゃなくて、現実的な鳥です。SFっぽさを出しつつも、現実性がある、となると鳥が一番いいんですね、きっと」

池「弱そうにも見えるけど……」

堀「これは弱そうですか? この句はもうコンドルとか、強い、ばさばさばさばさ、みたいな鳥では(※鳥が飛ぶジェスチャー)」

池「(爆笑) 私の考えでは、鳥って人間が捕まえたりできるもので、人間の方が強い感じがするのに、その鳥に人類が乗っ取られてしまうっていうのがこの句の怖さであるから、鳥の国なのかな、と」

堀「そうか。ばさばさーっていう、コンドルで考えていました。高柳先生が『鳥たちが生命をつないでくれるだろう』っていう書き方をしているように、おれはこの句を、今も生命力のある鳥が、未来でもやはり生命力があって、彼らは生き残り、彼らの国を作ったのだっていうようなイメージで捉えています。弱い鳥っていうイメージはできませんでした。弱い鳥といえば、開成高校の日下部太亮さんの『はちすから鳥が生まれてきたやうな』という句がありますが、これはひよわな雛鳥ですね。日下部君と青本さんの句の鳥は違う鳥」

池「うーん、いや、みんな一緒ですね、強い鳥も弱い鳥も。コンドルもスズメもこの句の中に全部います」

堀「人間はいないけれど、コンドルもスズメも一緒に飛んでいるような」

池「そうです。カラスもいて、みんな平和」

堀「いろんな鳥がいるんだね。それは考えたことなかった。で一種類の強い鳥がばさばさっと飛んでいるようなイメージでした(※再び鳥のジェスチャー)」

池「(大爆笑)」

堀「でも『国』ならいろんな鳥がいたほうがいい。さすが池原、それはいいね。イメージ変わりました」

池「文句なしの最優秀賞ですよ、この句は。これだけ広がりのある句は他にはなかった。来年の俳句甲子園もどんな句が出てくるか楽しみですね」

堀「そうですね。まぁ、来年は池原さんが最優秀賞ということで」

池「そんな、分らないです」

堀「そうですか(^o^) では、次の句に行きますか。青本さんつながりということで青本瑞季さんの句。えっと……どっちだっけ? 利き手が右手の方が瑞季さんでしたっけ?」※お二人は利き手が違うらしい。

池「右利きの瑞季ちゃんです。「み」ぎききの「み」ずき。「み」で覚えるんです」

堀「覚えました。これはもう全国に覚えてもらわないとね」

池「右利きの瑞季ちゃんですよ、みなさん」

堀「謎の青本シスターズ特集(笑)」

池「彼女は『一指にて言葉伝はる涼しさよ』の句が素敵ですね」

堀「優秀賞の句ですね」

池「この句の景は一体どんな感じなんでしょうね」

堀「そのことについては一度二人で揉めましたね(笑) おれはたとえば……『じゃあ俺、合格発表見てくるわ~』『ただいま』『どうだった?』、で、ピース、みたいな。こんな一指。あとグーサインとか。言葉なしで思いが伝わるんだっていうことが、涼しいな、気持ちいいな、爽やかだなと思った句なのかな、と」

池「一指ですから、ピースだと二本になっちゃうかな(笑)」

堀「あっ、ほんとだ(笑) じゃあ、グーサインだ」

(※二人で一指を使うサインを検討中)

池「野球のサインとかかな?」

堀「野球か~」

池「でも私は野球詳しくないので分りません! あ、私は最初送信ボタンだと思った」

堀「それ言ってたね。メールのぽちぽちぽち」

池「指一本でできること、そして言葉が伝わること、ならば」

堀「はたしてそれが涼しいのかな?」

池「きっと長い文を打ったんですよ。それで送信して、よし完了~みたいな」

堀「物理的な涼しさ。完了~♪ みたいな」

池「そうです。……『言葉伝はる涼しさよ』ですか。あんまり『涼しさよ』って聞いたことないのでびっくりしました」

堀「これ、何の本で読んだか忘れたんですが――。涼しさっていうのは主観的なものだから、○○○な涼しさよっていったら何万通りもできてしまう。だからこのやり方は危ないっていう意見も聞いたことがあります。まぁたしかに、こういう句の作り方はいくらでもできますよね。テーブルの上に文庫本ある涼しさよ、でもいいし、マグネットが冷蔵庫についている涼しさよ、でもいいし」

池「えー…、季重なりでーす」

堀「とにかく、涼しさっていうのは主観的だから、どんなことでも言ってしまえる。だからちょっと危ない方法らしい。でも、瑞季さんの句はまったく動かない。ざわっとくる『人間の素晴らしさ』みたいなものがあります」

池「チンパンジーにはできませんよね」

堀「なんでチンパンジーが出てくるんですか」

池「なんとなく。チンパンジーの指はダメかな、と(笑)」

堀「そういえば池原にはゴリラの句があるね。『青岬少しゴリラに似てる人』。ゴリラは一指で伝えられそう?」

池「ドラミングじゃないですか(笑)」

堀「(※ドラミングの真似) 池原もちょっとやってみて」

池「NGです」

堀「残念。……どうしよう、今回は真面目な回の予定だったのに」

池「話を戻しましょう。人間らしいって言ったら変なほめ言葉ですけど、人間にしか詠めない句ですよね」

堀「メールにしても、サインにしても、相手がいるからこそのものですよね。人間がみんないなくなっちゃったっていう柚紀さんの最優秀句とは対照的です」

池「あっ、そうですね! 双子でもこんなに違う。この句も自分らしさ、本人の作風が出ているいい句だと思います。他に気になる句はありますか?」

堀「柚紀さんの句で『アンよりも大人になってワインゼリー』。こういう変な感覚になる瞬間がありますよね。気づいたら、子供の頃に触れた小説やテレビドラマのキャラクターよりも、大人になってしまっていたとき」

池「あっ、ていうちょっと悲しい感じがある……」

堀「この句では『赤毛のアン』。おれだったら宗田理さんの『ぼくらの七日間戦争』。中学一年生が結託して大人たちに反抗する話。これを読んだのがちょうど登場人物たちと同じ中一のときで。おれはいまではもう十八歳(笑)そんなふうなさびしさが、文学作品が好きな人だったらよくあるんじゃないですかね」

池「私ははやみねかおるさんの『夢水清志郎』のシリーズですね。岩崎三姉妹! 読み始めたときにちょうど歳がかぶってて。中学一、二、三年生って成長していくんですよ。もう3人は卒業しました。それで……(※以下『夢水』シリーズの思い出話)」

堀「(※思い出話)」

池「(※えんえんと思い出話)」

堀「アンの話に戻りましょうか(笑)」

池「高校生はワインゼリーって食べれるのかな?」

堀「食べたことありますよ」

池「じゃあ、大丈夫なんだ。大人とワインゼリーは近いような気もするんだけど……」

堀「『アンよりも大人になって』っていうのは、自分も大人になったなぁ、っていう感慨じゃなくて、さっき言ったような複雑さを含んでる。単に大人になったという感慨とは違うから、近すぎることはないんじゃないんですかね」

池「複雑さも含んだワインゼリー?」

堀「ワインゼリーのちょっと苦い感じね」

池「ワインは苦そうですね。話は変わりますが、私は『赤毛のアン』のシリーズを全部読んだことあって。物語の最後には、アンは大人になるんですよね。だから『アンよりも大人になって』はあまりしっくりこない……」

堀「へええ」

池「あ、でもアニメなら。アニメになっているのは最初のほうだけ」

堀「じゃあ、この句のアンっていうのは」

池「『世界名作劇場』あたりですね」

堀「なるほど」

池「三善晃さんが作ったオープニングで始まる、リンゴ畑を駆け抜けて来るアン」

堀「相当古いアニメじゃないですか(笑)」

池「えっ、再放送でやりませんでしたか? 私は小学校の頃、家に帰ってきていつも観てました」

堀「なるほど。では、もう一句瑞季さんの句を見てみますか」

池「『団栗や水脈海に広がりぬ』! どういう景でしょう? 私は分らなかったんですが」

堀「僕は初見なんですが。うーん」

池「水脈、団栗……? 団栗は植えたら木になって、土の中に根を張って、土の中には水脈があって海へ広がっているよ、っていうことかな? 団栗からここまで世界へ拡散していく句は初めて見ました」

堀「あ、それ聞いたらちょっとわかった気がする。澄んでいます。そういえば瑞季さんの句に『詩を読むに眩暈ともなふ白目高』(『里』2013年7月号『ハイクラブ』掲載)というのがありました。おれはこの句が大好きで。『俳句甲子園うちわ』(※松山で選手に配られた、寄せ書き用のうちわ)に、甲子園の句じゃないのにこの句を書いてもらったんですよ。うん、彼女の句は澄んでいると思います。どうですか、この目高の句は」

池「分ります、なんとなく」

堀「本人が俳句甲子園に出したほうの目高は『餌をつつく目高明日は雨だらう』。これも非常にいいよね」

池「ちょっとつながりが分らなくて私はしっくり来ない……」

堀「『餌をつつく目高明日は雨だらう』。ふたつのことは気持ちいいくらいに関係ない。目高が餌をついついているから雨だろう、じゃないでしょ。取り合わせ。この離れっぷりに惚れ惚れする」

池「あ、あれですね『一雨の来さうな感じゼリー食ふ』(堀下の甲子園ゼリー句)。あれと一緒ですね」

堀「あはは。作品集読んだら、雨になりそう系多いですね。仙台白百合学園の西村七海さんの『透きとほるゼリー明日は雨模様』」

池「あらっ」

堀「丸かぶりじゃないか! って。自分ではいい句ができたと思ってたけど、類想だったのかな。明日は雨になりそうというのは主観的なものですからね。主観的なものはいろんなものに取り合わせやすいっていうのはあるかもしれません」

池「じゃあもっと、斬新なものにすればいいんだ。たとえば明日はあの人からメールが来そう、みたいな」

堀「斬新!」

池「アイツからいきなり、ヒマ~? って来そう、みたいな(笑)」

堀「誰のことだよ(笑)」

池「えーっと○○くん」

(※二人で恋バナ中)

池「ここらへんにしておきますか?」

堀「そうですね。第一回はこのへんで。ありがとうございました。最後ロクな話しなかったな(笑) では第二回からもよろしくお願いします」

2013年11月25日 文芸部室にて。 編集:木村・堀下



コメント
[1] 小川朱棕 | 2013/12/10 22:03
りんご畑じゃなくてりんごの林って言いたかったんです(>_<)
恋バナ(笑)誤解を生みそうで心配です(笑)
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