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【鑑賞文】ホムンクルスの会合(〇山EAST高校/ベガ)

 お互いの部の句の鑑賞文を書き合う企画、第1弾です。さて、この稿の執筆者の正体はだれでしょう……俳句甲子園関係者にはバレバレの名前ですね。そう、今年の開会式で選手宣誓をした、あのお方です。



第16回俳句甲子園公式作品集を読む!(目次)へ

〈旭川東の句の鑑賞・ホムンクルスの会合〉 〇山EAST高校・ベガ

全身に静脈這うや夏の海 池原早衣子
こういう句は大抵脈打つ動脈を使うのだろうが、この句はそれを「静脈」としているところがおもしろい。静脈は動脈とは違い、心臓に戻ってくるもの。夏の海のエネルギーや肌に感じる冷たさが体の隅々から静脈を通り自分の中心にまでに浸透していく感覚は非常に共感できる。夏の海のエネルギーと静脈の持つ静けさの対比が上手く出来上がっている。

青岬びー玉の奥に大帆船 渡部琴絵
『びー玉の奥に帆船青岬』とした方が575のリズムが整うのではないか?と言う人がもしかしたらいるかもしれない。しかし、この句はこれでとても綺麗に出来上がっていると思う。
まず語順がなんといってもこの句の肝であろう。この語順にすることによって、作者の視界には青い海と生命力に溢れる岬が見える。ラムネでも飲んだ後なのだろうか、そのびー玉をかざすと、ガラスを通しいつもより太陽光の反射を増した夏の海が姿を現す。この大帆船は作者の想像によって作られた大航海時代の壮大な帆船のようなものだと思うのだが、その想像ですらこの臨場感のある句では許容されそうな気がする。

白地図のうへに団栗転がしぬ 堀下翔
作者を含め私たちは高校生なのだから、この句の作中主体は高校生であると捉えたい。
主体は幼い頃団栗の実るような山で友達と、もしくは一人で遊んでいたのだろう。そして、高校生になった今、勉強で白地図を開けた時に昔を思い出したのではないだろうか。そして、思い出のつまった団栗を転がしながら あの山は今どうなっているだろうか とか あいつらは元気にしているだろうか などといった物思いに耽っているのだろう。
景としてはただ団栗を白地図上で転がしているだけなのだが、そこにある意味ノスタルジックな、リアルな心情が詠まれている。

五本指包む清水のやはらかき 木村杏香
季題指定がなかった分紙と指の句はどこの学校も自由に作句できたと思う。
この句はとても繊細に、しっとりと詠まれた句だ。
不純物のない少し冷たい清水に涼を求め五指ないしは十指を浸したんだろう。陽の光を浴びて乱反射する水の中に白く細い自分の指(この句は女性が詠んでいることを切に願う)がたゆたっている。それはまさに清水にやわらかく包まれていると言えるだろう。
着眼点や「やはらかき」といった平仮名表記が作者の女性らしさをひき立てていると思う。(作者が男性だったら本当に申し訳ない)

冬の星指をさしては名づけけり 渡部琴絵
冬は空気が澄んで天体観測にはとても向いている季節だ。肌を刺すような寒さの中で、自分の思い浮かべた星座を次々と言っている子どもの姿は嬉々としていて、寒さよりも星々や宇宙への思いや興味の方が強いのだろう。一つではなく「さしては名づけけり」として複数にすることによって5W1Hがより鮮明に現れ、臨場感が増していると思う。



コメント
[3] 小川朱棕 | 2013/12/30 09:29
閲覧&コメントありがとうございます。
迷惑だなんてとんでもない(笑)、立派な鑑賞記を書いてくださって感謝です。
来年の俳句甲子園に向けて、お互い頑張りましょう。
[2] 松山東男子 | 2013/12/29 00:14
うちのベガが迷惑をおかけして…笑
彼もまた俳句を愛する一人として、来年も頑張ってくれるでしょう。
同じチームになれるかな?笑
[1] 松山東男子 | 2013/12/29 00:13
うちのベガが迷惑をおかけして…笑
彼もまた俳句を愛する一人として、来年も頑張ってくれるでしょう。
同じチームになれるかな?笑
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