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【リレー小説】 秋麗の通学路/想真唯愛・ありあ

八月二十八日に想真唯愛とありあの二人でリレー小説を書きました。
・テーマ「秋」
・参加者~想真唯愛(水色)、ありあ(オレンジ)、合作(ピンク)
・一人持ち時間3分(合計7周)


 あるよく晴れた秋の日のことだった。私は何もない通学路を「ひとりぼっち」で歩いていた。今日は「ひとりぼっち」なのだ。なぜ私がこんなにも「ひとりぼっち」を強調するかというと、今日は初めて通学路を「ひとりぼっち」で歩いているからだ。「ひとりぼっち」の理由は言いたくないので言わないことにするが、今日はとにかく「ひとりぼっち」なのだ。それ以外の何ものでもない。ただ、私のよこを小さな猫が通り過ぎた。その子猫が私に向かって小さく鳴いた。間の抜けた鳴き声だった。小さなしっぽをゆらしてその猫は私を置いて先に行ってしまった。私はまた「ひとりぼっち」になった。
 今日は7時に起きた。朝ご飯は食パンにマーマレードをかけて食べた。友達にもあいさつした。小テストも好調だった。しかし事件は起きた。私の家にいたペットのインコがいなくなってしまったのだ。私が小学生の時からずっと大事に飼っていたインコのぴーちゃんが、突然いなくなってしまった。それに、そのショックから立ち直れずにいた私をなぐさめにきた友だちのみゆにも怒鳴りつけてしまい、冒頭に戻る。「ひとりぼっち」になってしまったのだ。
 あの猫がぴーちゃんに何かしたんじゃないか、そんな風に
思った。ぴーちゃんの背中には愛らしい水色の羽毛の模様があった。先程の猫の口の周りが水色っぽく見えたのは気のせいだろう。かき氷を食べたあとの口みたいだった。ぴーちゃんの羽はかき氷のシロップでもない。
 頬ずりするとやわらかく、ぴーちゃんはキューと鳴いた。3歳下の弟はぴーちゃんに噛まれたら怖いと言って、私たちの行動をいつも見張りでもするかのように私たちの行動をいつも
見張りでもするかのように私について回り、ぴーちゃんが何かをしゃべるだけで逃げ出していた。そんな弟がかわいくておもしろくて、ぴーちゃんに何日、いや何週間もかけ弟の名を覚えさせたりもしてみた。でもそんなぴーちゃんは今はいない。みゆに何て言って謝ればいいかもわからない。今日の私は最低だ。だから「ひとりぼっち」になったのだ。
 駄菓子屋の角を通り、家に向かう並木道に出る。3時間目の体育の授業のマラソンで私は転んでしまった。黄色いスニーカーが少し汚れている。その時もみゆは私を優しく気づかい、大丈夫? と声をかけてくれた。そんなみゆに私は何も言わなかった。言えなかった。今日はいつだってぴーちゃんのことを考えていて、今日のみゆの顔がちっとも思い出せない。最終的にはどなりつけ、みゆを自分からつきはなしてしまった。それなのに今さらごめんなんて、とてもじゃないけど言い出せない。ため息が出る。息は期待したほど白くはならなかった。いつもどおりの透明だ。みゆがとなりにいない。
 道の途中の児童公園に、桜の木がある。今はもちろん桜は咲いていないが、秋でも桜の木は桜の木だ。私とみゆは小さい頃から一緒だった。あの桜の木でおままごと、花のかんむり作りをした。大人になるにつれ、桜の木の下での二人の時間はおしゃべりやテスト勉強となった。

 そんなたわいもない会話や、みゆと一緒に過ごす時間が私は大好きだったのに、私は、私はそれを、自分の手でこわしてしまった。自分でそれをまたつなぎなおせる勇気も自信も力もないのに。ぴーちゃんだってきのう確かかごの戸をあけっぱなしにした気がする。ぜんぶ私のせいなのだ。
 ……あれ? 
 わけもわからず涙が出てきた。

 桜の木、今はかれ葉がいくらかついている木の枝に、白い鳥がとまっていた。鳥はキューと鳴き、翼をはためかせた。水色の羽がふるえるようにはばたき、私のほうに向かってきた。私が手をのばすと、私の指にぴーちゃんは着地した。ぴーちゃんの細い脚が私の指をつかんだ。少しくすぐったいけれど、なつかしい感覚だった。私が頬ずりすると、ぴーちゃんはきゅーと
鳴いて、嬉しそうに覚えたての言葉をいくつかしゃべった。
 ぴーちゃんがいた。ぴーちゃんが見つかった。私はそれでまた泣いていた。ぴーちゃんと触れている頬にも、涙が流れる。それでもぴーちゃんははなれない。あたたかかった。
「大丈夫?」
 聞き覚えのある声。今日のマラソンを思い出す。あの声と同じだ。

 会いたい人にもう会えた。それも同時に。振り向くと私と同じ制服を着た少女が立っていた。みゆだった。
「大丈夫?」
 彼女はもう一度たずねた。私が肩に手をそえると、ぴーちゃんは素直に私の肩にとまり、それからはなれることはなかった。
「ありがとう」
 その一言はみゆに向けた言葉であり、ぴーちゃんに向けた言葉でもあった。みゆは何もいらないというようにやさしく首を左右にふった。

「いいの。黙っていたのに何も知らないで話しかけた私がわるかったんだよ。ごめんね」
 私が先にいおうとしていたのに、みゆは私に謝罪をする。
「やめてよ、私のほうがわるいから、気にしないで」
 急になんだかはずかしくなる。
「その子のこと、探してたんだよね。私の家の前を朝とんでから、教えてあげたかったんだ」
 それならなおさら私が悪い。

「ごめんね」
「もう謝らないで」
 ぴーちゃんがきゅーと鳴き、私たちの頭上をとび回った。それから木のてっぺんにとまり、動かなくなった。町には夕焼けがさしてきている。
「話したいことがたくさんあるの。」
 みゆは私に言った。私たちはうなずき合って木の下のベンチに向かう。落ち葉がかさりかさりと音をたてた。もう手袋やマフラーが必要だろうか。
それはいらないだろう。
 体の中心がほのとあたたかった。二人の耳に響く声もあたたかった。すべてがあたたかかった。私たちは日が暮れるまで、昔に戻ったように話し続けていた。End



コメント
[1] 開来山人 | 2013/08/31 21:26
文字色見づらい!
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